運命のふたり

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 そのスケート場には家族で行ったことがあるというユキを無理やり引き連れて見学に行った。始めの数回はユキもついてきてくれたけど、夏休みも後半になってくると息切れし始めて、あとはあたし一人で毎日のように通い詰めた。二階の観覧席で、家から持ってきた水筒を飲みながらミタケがすらりとした手足を優雅に広げるのを眺めるだけであたしは幸せだった。それから高校、大学と年齢があがるにつれ、ミタケはどんどん有名になっていった。テレビにも出るようになり、ミタケの公開練習の日は観覧席が埋まるようになった。  ショーに出るとわかればそれが東京でも大阪でも迷わず遠征していたあたしは当然のように金欠になった。それで大学時代、家賃にまで手を付けてアパートを追い出されたことがある。友達のツテを頼って渡り歩いて、最後に残ったのがユキだった。 「いや、さすがにまずいでしょ」とユキが難色を示したけど、あたしは必死だった。そのころミタケは活動の拠点を移していたので、ミタケを追いかけるならユキのアパートがまさに理想的な立地だったのだ。 「皿洗いでもトイレ掃除でもなんでもやりますから!」  というあたしのけなげさに打たれた、のかどうかはわからないけど、結局あたしたちは同棲することになった。それに、ユキのほうにもメリットがないこともない。根っから機械音痴だったユキは車の免許をもっていなかったけど、18歳になるや否や最速で免許をとり、北は東北地方、南は中国地方までミタケを追いかけた経験もあるあたしはユキにとってのよきドライバーだった。……のだと思う。
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