お弁当と私

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お弁当と私

「今日のお弁当は何かな?」 子どもの頃から人一倍食べる事が好きだった私は、母が作ってくれるお弁当がとても楽しみでした。幼稚園、小・中学校(部活)、高校、そして、お恥ずかしながら社会人になっても母にお弁当を作ってもらっていました。 料理関係の仕事に就いていた母が作ってくれるお弁当のおかずは、いつも全て手作り。冷食を使わないのは、彼女のこだわりだったそうです。彩りのプチトマトやブロッコリーを含め、品数はいつも三、四品ありました。多い時は五品の日も。 散々甘えていましたが、結婚して子どもができ、私もお弁当を作る側になりました。母と同じように冷食は使わず手作りしていましたが、これが結構大変。今更ながら、こんな大変な作業を十年以上続けてくれた母には感謝しかありません。 朝、私がお弁当を詰めていると子どもがやってきます。 「お母さん、今日のお弁当はなに?」 「ひ、み、つ」 私は絶対に中身を教えません。 それは、嘗て私がお弁当箱を開ける時に感じたワクワク感を味わって欲しいから。 弁当を買ったり、自分で作るようになると、嫌でも中身が分かります。だから食べたい物を選ぶようになる。そういう楽しみもあると思います。でも「何が入ってるか分からないワクワク感」は、誰かに作って貰ったお弁当じゃないと味わえない。今だけなんです。 作中の小林くんも、谷口さんに作って貰ったお弁当にとてもワクワクしていました。そして谷口さんも、そんな小林くんの姿に元気を貰っていました。 誰かの為に作ること、自分の為に作って貰えること、そして、共に食べる事によってもたらされた気持ちの変化。劇的なものではなく、穏やかなものではありますが、それがきっかけとなり、自然と前を向いていけるような、そんなお話になっていたらいいなと思います。 最後に。 本棚追加、スター、スタンプ、ペコメなどでの励ましをくださった読者様、有り難うございました。 そして、ここまでお読みくださった皆様に最大級の感謝を。本当に本当に有り難うございました(^^) kanata
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