1306人が本棚に入れています
本棚に追加
9 興奮 ※
三隅と別れ、エルは抱きかかえられたまま駐車場に連れて行かれた。そこには神谷の専属なのか、運転手付きで車が用意されていた。神谷が来ると運転手がドアを開ける。二人が乗車すると発車した。
車の中、個室という空間では先ほどの部屋とは違い、もっと神谷の香りが強く漂っていた。
しかしエルの恥じらいという精一杯の意識と、運転席には運転手がいるという歯止めから、涙を貯めながら必死で神谷にしがみつき快楽を耐えていた。いや、ずっとエルの小さな男根は反応をしていて、神谷にしがみついていながらも小刻みにそれを神谷の腹に押し当てていた。神谷は終始笑顔でそれを見ていた。ただし自分からは手は出さず、ずっとエルの頭とうなじを撫でているだけだった。
「そろそろ限界かな?」
神谷はエルの涙をぬぐいながら言ったが、エルの耳には届いていなかった。
エルの吐息は荒く、ずっと背中を大きく揺らしていた。車は神谷のマンション前に停車し、マンションのコンシェルジュがドアを開けた。
抱えられているエルは、他の人の声に一瞬びくっとなったが、そのまま神谷の胸に顔をうずめて、外との意識を遮断した。
「ふふ。セキュリティーの問題もあって、このマンションの住民は全て指紋登録を済ませなければいけないんだ。エルは発情期で籠っていたから、発情期中に、番を住ませるという意思だけコンシェルジュに伝えたよ。エントランス階からは、指紋が作動しなければエレベーターで自宅の階にも行けないからね」
「……」
エレベーターを待っている間、神谷はエルに話しかけた。エルはわかったというように、神谷の首にかけている腕にぎゅっと力を込めた。
そしてエレベーターが到着する音が鳴ると、神谷は待機していたコンシェルジュに伝えた。
「ありがとう、この子の登録は後日またするよ。今日もまだヒート明けでこんな状態になってしまったから、落ち着いたら挨拶に行かせてもらう。僕の大切な番だから皆さんにも守ってもらいたいんだ、よろしく頼むね」
「神谷様、かしこまりました。このマンションに住む方の番の警護も込みでの契約となっているのでご安心ください」
神谷が人と話す柔らかい声が、エルの耳には心地よかった。
「僕もやっと、このマンションの最も重要な恩恵にあずかれる身分になったみたいだね」
「はは。アルファのための住居とは、本来番を守る場所になりますからね。改めて番契約おめでとうございます」
「ありがとう。じゃあ、また」
エレベーターに乗り込み、神谷は抱えているエルを一層強く抱きしめた。
エルのうなじの香りを堪能する。やっと二人きりになった安心感から、神谷自身も少し緊張が解けたのだろうか。エルはなぜかそう思えてしまった。そして強く抱きしめられると、また官能が引き起こされる。
「ん、んん」
「番の無防備な姿をさらすことで、ずっと緊張していたみたい。番ができるまで、実感するまで、ここまでとは思っていなかったから、ちょっと自分におどろいちゃった」
神谷はそう言うと、またエルのうなじにそっと唇を落とした。
「あっん、恭一……。ここ、もう家?」
「ああ、そうだよ。まだエレベーターだけどもう着くよ。やっと二人きりだ」
ふと今の状況を把握した。その時、神谷の住居の階につき、エレベーターのドアが開いた。
「ずっと抱っこさせてごめん。疲れただろ? 俺、もう大丈夫だから」
「僕がもうダメだ。エル、少しの間でも離れて辛かったよ」
神谷はエルの唇に乱暴に吸い付いた。エルも、それを当たり前のように招き入れて、自ら神谷の舌を引き入れる。
「んっ、っは、んん」
「エル、エル、好きだよ」
「あっ、ちょっとまて、もうそこ家だろ。せめて家の中で盛れよ」
「盛っていいの?」
「ってすでに盛ってんじゃん。それにソレ、もう納まんねぇだろ」
エルは密着している間、ずっと神谷の欲望の硬さを感じていた。もう、我慢しなくていいんだ。そう思い、抱きしめられていて自由の利かないエルの体ごと重さをわざとかけて密着させた。
「ふふ、体全体で煽るなんて、単純な感じがエルらしくてまたそそられるよ」
「もう、そういう話はもういいから、早く、鍵開けてっ」
「はいはい」
やっと家にたどり着いた。そう感じ、なぜだかエルはホッとしていた。そこはまるで自分の家であるかのように、帰ってきたという感覚に陥っている。今はそんな些細なことはどうでもいいというように、エルは玄関先で靴を脱がせてもらいながらも、早く神谷が欲しくてたまらなかった。
「恭一、はやく」
「ほら、脱げたよ。どこに行く? ベッド? お風呂?」
神谷はまだ余裕のあるように、エルに話しかける。それをエルは苛立ちながら、なぜ自分だけが神谷を求めているのか、神谷は自分が貪欲に欲しくないのかと疑問を感じた。
「なあ、俺だけがこんなんなの? 恭一はなんでそんなに余裕なんだよ」
エルは自分の濡れた先を布越しに見せつけた。そこは小さいながらも立派に主張しているのがズボン越しにも見てわかる。それを目で追いかけた神谷は「くそっ」とつぶやいた。神谷からは出なさそうな言葉をぼそっと掃き出し、怖い顔でエルを見た。エルはその顔にビクっとした。
「ここまで僕がどれだけ理性を保ってきたと思う? 悪い子だね、エルは。僕から逃げて、他の男にうなじ触らせて、さらには移動中もずっと僕を誘うフェロモンを出していた。丁寧にエルの希望を聞いてあげているのに、余裕? 僕に余裕なんてあると思う? 本気のアルファを見せてあげるよ」
「あっ」
まだ玄関先だというのに、神谷はそこで自身のズボンを下着ごと一気にずり下げた。そこには凶悪すぎるモノがピキピキと筋を立てて、赤黒い男らしい逞しさをすでに出していた。
「エル、ズボン脱いで、尻をこちらに出しなさい」
「あっ、恭一……」
神谷は言ったそばから、それを待てないかのように自らエルを引き寄せ、片手ではズボンを引きずり下ろし、すぐにエルの体をくいっと前に向かせて腰を触り、前かがみにさせ、尻の二つのふくらみを勢いよく揉みだし、それもつかの間、ぱっくりと後孔をぐいっと自らの手で開いた。
「ああっ」
「もう待てない。ここに来るまでに十分に濡らしていたし、いいよね。挿れるよ」
「ああッ……! あんっ。あっ…あっ…んんッ」
「エル、エル、愛してるっ。クソっ、もう持ってかれそうだ」
「あっ、いやっ、あっ」
神谷は必死に腰を振る。互いに立ったままなので、エルの力は抜けきって体重を支えられずにいるその腰をがっちりと手でホールドして、エルの小ぶりな尻に神谷の肌が、ぱんぱんと当たる。そして何度も最奥にねじ伏せる。
「嫌なんて思ってないだろ。気持ちいんでしょ? 僕は気持ちよすぎてもう耐えられそうにないよ」
「あっ。そんな早くっ、うごかないで、ダメ。もうきちゃう、ああッ」
「エル、イって」
「あ……ん、ンンッ!」
エルは目の前の壁に手をついていて、そこに白濁を吐き出した。そして神谷は、支えていた腰から手を放し、今度は後ろからエルのお腹に自分の腕を巻き付けて、ぎゅっと数ミリさえも隙間なく密着して、エルの中で自分のモノがさらに爆発寸前まで追い詰められた。
「うっ、エル、エル」
「はっ、あっ、はあっ、恭一」
エルが果てて、追いかけるように神谷も昇り詰めた。後ろからエルの腹を支えるだけの姿勢で神谷は覆いかぶさる状態。エルはかろうじて目の前の壁に手をついたが、すでに力は残ってなく、神谷の腕と結合部のみで支えられていた。
「はあっ、恭一、おなかのところ、手の力いれすぎ、きついよ。この体勢」
「ああっ、わかっている。ちょっと待って」
「あああっっ」
エルに無理な体勢をさせているのは自覚していたので、余韻もなくズルっと自身をエルの中から抜くと、またエルの入り口付近のいいところに当たったらしく、エルの可愛い声が思いがけず聞けたことに満足した神谷の分身はすぐ硬くなった。ここではエルの体力が先に奪われ、満足に抱けないままエルがダウンしては困るので、神谷はすぐさまエルを抱え寝室へと向かった。
「恭一、キスしてないよ?」
「ああ、これからキスして、またエルを抱くから。いつまでも獣みたいに玄関先でしていたらエルが辛いだろ」
「ふふっ、それもそうだな」
寝室のドアを乱暴に開けるとすぐさまエルをベッドにおろした。ドアを開けた人物とは思えないくらいに、エルを丁寧に置くのでエルはまたその優しさに笑った。エルは相当大切にされているらしい。だったら、あんなに早急に玄関先で挿れることないのにと思うが、あれをしてもらわなければ、エルは神谷との熱量の違いを感じ悲しくなっただろうと考えなおす。あそこでの獣のような繋がりは、やはり必要なことだったのだと思うことにした。
「恭一っ」
「エル、可愛い顔をずっと見ていたいけど、まずはその唇を頂戴」
「んっ、んん」
やっと待ち望んでいた恭一の唇が自分のそれに重なり、エルはまた満足感を覚えた。
大概だなと思うが、三隅の言っていたことが本当なら仕方のないことだ。エルは神谷の番でオメガという人種なら、神谷にキスされて中に出されて嬉しいのはオメガなのだから仕方がない。それに、初めて神谷に抱かれた後のような嫌悪感はない。あの時は体だけが受け入れていて心が付いていかなかったが、ほんの数日でここまでに変わるとは。三隅の丁寧な説明がオメガであると自覚できたのかもしれない。
「恭一、もっと。また頂戴……」
「ああ、エルが倒れるまで僕をあげる」
「ふふっ、嬉しいっ。ああっキスも、気持ちいい」
「んっ、じゃあ、もっと口開けて」
「はっ、ん、ん、グチュ、んん」
執拗な攻めを舌と唇、そして時折指でうなじを触りながらキスは続く。耐えきれず神谷の出した唾液をゴクリと飲み込む。そして急に体中に熱さが加わった。
「あっ、きょう、きょういちっ……熱い」
「僕の唾液を飲んで興奮した? 僕もエルの出す液体でもう限界だよ」
ぴちゃぴちゃとエルの口元を伝う液を、ひとつもこぼさないというように、神谷は舐め続けながらキスを仕掛ける。
二人は獣のように抱き合いながら果てた。
最初のコメントを投稿しよう!