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16 マーキング ※
神谷はそのまま仕事に行くのかと思いきや、エルの服を脱がせた。
「え?」
「外に行って、誰かの匂いが混じっているの、いやだ。マーキングさせて」
「マーキングって……犬か?」
「アルファだよ」
そう言いながらも、全ての服をはぎ取られ、明るい室内でくまなく全てを見られた。男根を掴まれ裏まで見る。その行動にエルは焦った。
「な、なに!?」
「なにって、見ている」
「だから、なんで!?」
「見たいから」
今度はソファに座らされて、足を開かれ、後孔の中までぱかっと指で広げられた。
「ああ! やだっ」
「どうして嫌がるの? 外でここ使った?」
「は!? なに言っているの?」
「ちょっと入れるよ」
「え、ああ! あんっ、あっ、あっ、いたいっ」
「うん、しまりもいいし、濡れてはない」
いきなり解しもしていない孔に指を突っ込まれて、引きつる痛さに生理的な涙が出てきた。
「な、なんだよ、なんなんだよ!」
「セックス、するよ」
「ど、どうして!?」
「どうしても。拒絶するの?」
エルは、神谷のことが初めて怖いと思った。記憶が無くなった初めての日は、怖いというより危ない人だと思ったが、番になって生活を一緒にするようになって、エッチは多いし激しいけれど、エルのことを大事にしているのがわかっていたし、愛があると思っていたから、エルは受け入れることに疑問を抱かなかった。
しかし、今は違う。愛は……あるのかもしれない。だけど怒っている。愛しているから抱くのではなく、怒っているから抱くのだろう。
マーキングと言った、アルファだからと。ドラマを見て知識が増えたエルには、その意味もわかるから抵抗はせずに従うことにはしたが、恐怖は隠せなかった。
「ん、んん」
「そんな泣いていても、怖いって感情を出していても、エルは僕に抱かれるとちゃんと感じるんだね、嬉しいよ、愛してる」
神谷はジェルをお尻に入れて、急いで濡らした。
普段は何度も指でも舌でも解して、感じさせて、そしてエルからオメガ特有の分泌液が出るのを待ってから挿入するのだが、今回はそんなことをせずに、早急にジェルで濡らして滑りを良くしただけだった。
神谷の大きなモノをいきなり挿入されたエルは、痛さと圧迫感に驚いた。一応粘着力のあるジェルで濡らしたから、後孔が切れることはなかったが、解していないところはいくらオメガであろうとも、発情もしていない、感じてもいない段階では苦痛だった。
「あ、あ、、は、はげしいっ」
「そりゃそうでしょ、僕を怒らせたんだから。可愛がるだけじゃダメだって教えないと、エルはわからないでしょ。前に三隅君にうなじ触られて初めて、僕以外に心を許しちゃダメだってわかったはずなのに、どうして一人で行動できるの」
怒りながらも、いつも以上に激しく腰を振る神谷。エルは必死に抱きついているのが精いっぱいだった。
「あん、ああ! ンあァァァ!」
「くっ、エル、エル、もう逃がさない。絶対に!」
「うう、うっ、あ! だめ、そこぉ、ああああああ」
「……っく」
いつもは時間をかけて、丁寧に行う行為も出すためだけに行ったように、エルには思えて仕方なかった。その一つとして、神谷は服を脱ぐことなく早急に終わらせた。
それなのに、エルの体は、心は、まるで乾ききっていた大地に恵みの雨が降りてきたかのように、瞬時に潤った。
「はぁ、はっ、ハア」
「エル……」
神谷が擦り付けるように、エルの中に精液を注いでいく。アルファの射精は長い。いつもはその間キスをしたり、ネチネチと触ったり、くっついていたりするが、今日はそれがなく、義務のような行為に悲しくなった。確かにエルは神谷と一つになって、潤っていく感覚があるのに、この矛盾する二つの感情にエルは追いつけずにいた。
「エル、瞳を開けて」
「……っく、うっ」
「むりやり、ごめん」
エルは目を背けて、声が出ないように泣いたが、どうしても空気は出てしまう。そして神谷が中に入ったままなので、エルが泣いてヒックという度に中も締め付けてしまい、エルは泣きたいのに、喘いでしまって、どうしようもない気持ちになった。
「エル、愛している」
「うっ、恭一。こ、怖かった」
「うん、わかっている。ごめん」
「じゃ、あ、もうおこらないで。それに、まだキスも、してない」
エルは下から、流れる涙を隠さずに神谷を見上げた。神谷は怒っていた顔はもう消えていて、不器用に笑ってキスをした。
「ん、んん、」
「エル、エル、愛している」
「はっ、あん。キスだけでしょ、なんで、また大きくしてるの?」
「だって、エルが可愛いから」
「あ、あん、じゃあ、今度は優しくゆっくりしてよ」
「うん、やり直させて」
そうしていつも通りの穏やかで、いつもより激しくない交わりが始まった。
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