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陸斗から飽きるほど聞いた言葉をそのまま聞いた美夏の反応に、最初の私の気持ちを代弁してもらえたようで私は少し溜飲が下がった。
「え、ちょっと、もうさぁ、なんで別れないの?」
「ん-、それがねぇ。私にもよくわかんないの」
「好きで仕方がないとか?」
「いや、正直、最初からそこまで好きじゃない。告白も向こうからだったし」
「はぁあ!?じゃあなんで!?」
美夏の疑問は最もだ。私は暫し悩むように額に指を添えた。
「ん-、なんか、慣れたら別にそこまで困らないから?」
言葉を濁し伝えたものの、割と嘘ではなかった。
正直最初のデート報告はビックリしただけであって傷つくといったことはなかった。むしろ、陸斗だからしょうがないと納得している私がいた。別に、好きで好きでたまらない、というわけではないのに、私が傍にいてあげないと結局ダメなんでしょ、と自信満々に思っている謎の自分がいる。それは「超好き」という言葉にあてはまると思うのだが、どうもその言葉だとしっくりこない。だから私は誰かに説明を求められた時「私は困らない」と告げることにしている。たとえ彼が、何百回浮気をすることになろうとも。
「へー。まぁ、杏奈がいいならいいや。確かに2人お似合いだし、2人でいる時の空気はなんか澄んでるし」
「澄んでるって……初めて言われた」
「だって澄んでるんだもん。というか、ぴったり、て感じ?なんかこう、あるべくしてある!、みたいな」
「はは、なんか、特別感出てていいね、それ」
自分で言って、特別、という言葉には納得した。
そこまで好きじゃない。
だけど、特別。
この感覚は何なのだろうと思うが、深く考えても答えは変わらないという答えでいつも腑に落ちるから私は基本深く考えないようにしている。
***
でもだからといって、理不尽な攻撃を受け入れるほど器が大きいわけじゃない。
「あー……ここまであからさまは初めてかなぁ」
美夏とゆったりとした昼食休憩を終えてデスクに戻ってきた私は、自分のデスクの惨状に流石に顔をしかめてしまった。
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