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テンポよく進んでいく展開に私が追い付けなくて呆気に取られていると、麻由美さんは「さ、あとは陸斗さん、この幼い女の子をどうにかしてくださいな」と面倒くさそうに陸斗に全てを丸投げした。陸斗が困るだろうと思って隣を見たが、意外にもキリッとした顔つきで『僕、怒ってます』と言わんばかりに百合を睨みつけていた。その姿も見たことなくて私が動揺していると、陸斗はきっぱりと言い放った。
「俺、杏奈以外大切にする気ないから、もう関わらないでくれ」
「え」
「はぁ!?」
驚いた私の声をかき消して百合が発狂した。
「ありえない!なんで!?百合の方が若いのに!まだ23歳のピチピチだよ!なんでそっちのおばさんを選ぶの!?」
「あなたが子ども過ぎるからでしょう」
百合の言葉にズバっとツッコミを入れる麻由美さんの切れ味に私は吹き出しそうになるのをこらえるのが大変だった。
「うるさい!!ていうか別れるとか無理だし!百合が一番だし!こっちは既成事実作ったんだから!」
「既成事実?」
「これ見てみなさいよ!」
百合の言葉に首を傾げた私に『しめしめ』と言わんばかりにニヤァと笑って百合はスマホの画面をつきつけてきた。覗き込むと、そこには陸斗と百合がラブホテルに入る写真と、2人がベッドで服を着たまま寝る写真があった。麻由美さんは汚いものを見るような不快感を露わにした表情で「んまっ」と声を上げたが、私は「ああ」と頷いて、勝ち誇ったどや顔をしている百合を冷めた気持ちでじっと見据えた。
「陸斗の服、複雑だったでしょ」
「え?」
百合にとっては予想外の返答だったようで、何を言われたのか全く意味が分からないといった様子で呆気に取られていた。すでに真相がわかっている私はため息交じりに言葉を続けた。
「陸斗、昔睡眠薬盛られて勝手に既成事実作られそうになって滅茶苦茶傷つけられてから、勝手に脱がされないよう本命じゃない人とデートに行く時は複雑な構造の服を着るようにしてるんだって。他人に勝手に脱がされないように」
「なっ……」
どうやら図星のようで、百合が大きく動揺した。
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