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「ねぇ杏奈、また陸斗君浮気してたよ!?しかも百合と!あの悪女、杏奈の彼氏だとわかってて陸斗に色仕掛けしやがったんだよ!?わざとらしくぶつかったりしてるとは思ってたけどまさかあんな奴だったなんて!もう……て、聞いてる?」
会って早々、怒りMaxと言わんばかりの表情で私に詰め寄ってきた美夏は暫くまくしたてていたが、私の反応が今一なのに気づくと眉を下げ、眉間をぎゅっとよせながら私の顔を覗き込んできた。美夏にとって私の、ぽっけー、とした様子は彼氏の浮気を聞いた女の反応にはそぐわなかったのだろう。私でもそう思う。でもこうなってしまうのも、仕方がない話なのだ。
「うん、聞いてる」
「……意味、わかってる?」
「うん、陸斗がまた浮気したんでしょ」
「そう!また!しかも!3度目!」
「うん、そこにプラス3ね」
「は!?」
美夏が目をまんまると見開きながらあんぐりと口を開け、呆気にとられました、と言わんばりの顔をした。その表情の変わりようは少々漫画じみていて、私は思わずフッと吹き出してしまった。けれどその笑みは美夏にとっては“余裕の女の笑み“に見えたようでまた訝し気な表情に戻すと「えぇ……なんで浮気されててそんな余裕そうなの?」と首を傾げていた。本気でわからない、といった心情を一切隠そうとせず表情で訴えてくる美夏の姿は30代の独身女性とは思えない素直さがあって、こういうとこが好きだなぁ、としみじみ思いながら私は軽く肩をすくめてみせた。
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