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15:レナ
「街だ!」
俺は街に入れた。それもこれもカカロッティ商会の長であるホブスさんのおかげだ。
「ありがとうございました」
俺はお礼を言って冒険者ギルドへ向かおうとする。するとホブスさん。
「まぁ待ちなさい」
そう言って、財布からお金を取り出した
「冒険者証の再発行にはお金が要る。これを持っていきなさい」
俺は礼を言う。
「ありがとうございます。この御恩は決して忘れません」
するとホブスさんは困った顔をした。
「いや。それは儂の言葉じゃ。あの時に儂らは全滅していてもおかしくなかった。それを希少な奇跡の薬で癒やしくれたのじゃ。この程度では到底、恩は返しきれない。冒険者ギルドへ行ったら、また儂の店に来なさい。住む場所や装備品を用意しよう。そうじゃ馬車も失ったんじゃったな。補償金も儂が払おう」
俺は感激で震える。
「な、何から何まで……すみません」
頭を下げる。自然。涙が溢れ、こぼれ落ちていく。
「ふぁっふぁ。なぁに。気にしなさんな。それもこれもお主自身の善行の結果じゃ」
そう言って一人の冒険者を呼んだ。別れ際に子供と手を振っていた黒髪のショートヘアの女性だ。
「レナ。済まんが、こちらのレノル殿に付いて行って手伝いを頼むよ」
「はい。ホブス様」
こうして俺は彼女に案内されて冒険者ギルドへと向かうのだった。
※
※
※
「冒険者ギルドはどこも一緒なんだな」
建物から出て感想を述べる。するとレナがクスッと笑った。
「はい。冒険者がどこの街でも戸惑わないようにってことらしいですよ」
「へぇ。そうなんだ?」
「はい。作りを統一すれば困ることもなくなりますからね」
「へぇ。あぁそうだ。敬語は使わなくていいよ。俺。歳は上だけど冒険者としては新人だしさ」
「……そう? じゃあ。普通に話すね」
「うん」
「それにしてもレノルさんって27歳なのね。驚いた。どうして、その歳で冒険者を?」
おっと、いきなりだな。少し話すかどうか迷う。が、別にいいだろう。話すことにした。
「俺さ。つい最近まで錬金術師だったんだ」
するとレナは驚いた顔をした。
「錬金術師様!」
俺は苦笑い。
「様は要らないよ」
「でも! 錬金術師様って色んな装備品の素材とかを作ってるんでしょ?」
「そうだね」
「凄い!」
「あはは。ありがとう」
「でも、そんな凄い職業からどうして……」
「うん。実は一緒にやっていた親友に研究結果を全部盗まれちゃってさ」
「それって……あの、奇跡の薬……?」
俺は頷く。
「あぁ」
するとレナ。
「酷い! なんで! 一緒に研究していた親友から盗み取るなんて!」
「うん。なんでだろうね。でも……その際に妻も盗られてさ」
「え……」
俺は何があったのかを詳細にレナに話した。なんでだろうね。こんなの重い話。初対面に近い相手に全部話してる。誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。慰めてほしかったのかもしれない。そんな俺の告白を受けて彼女が言った。
「もしかして、この街に来たのって……天空の塔?」
「うん。そこで願い事をね」
「何を願うの?」
「過去に戻って、全てをやり直そうかと」
「過去? そんなことって出来るの?」
「さぁ? でも何でも願いが叶うんだろ?」
「うん。そういう噂だね」
「叶わないかな?」
「どうだろう?」
やってみないと分からないということか。
「挑戦して駄目なら……諦めるさ」
そう言って笑う。乾いた笑いしか出てこない。
するとレナが「叶うよ」と言った。俺は彼女へ視線を向ける。すると彼女が微笑みながら言った。
「きっと天空の塔の守護者が叶えてくれるよ」
俺は、そう言って真っ直ぐに見つめてくるレナにお礼を言った。
「ありがとう」
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