16:病気の弟さん

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16:病気の弟さん

 話しついでにレナにも尋ねる。 「レナはホブスさんとは?」 「うん。16歳で冒険者を始めたときからだから3年になるね」 「へぇ。長いね」 「うん。ホブスさんには色々と世話になってるんだ」 「レナはどうして冒険者に?」  すると彼女の顔に少しだけ陰が指した。 「うん。私ね弟がいるんだけど病気でさ」 「へぇ。ん? もしかしてその病気を?」 「そう。天空の塔で願って治せなかなって」 「登っては見た?」 「えぇ。少しだけ。でも正直、あまりオススメはしないな」 「どうして?」 「すっごいキツいし難しいの」 「へぇ。もしかしてトリートのポーションを求めたのも?」 「それもある。病気に効くかな?」 「ごめん。多分効かないと思う。病気で消耗した体力の回復とかには効くはずだけど……まだそこまでは検証してなかったんだ」 「そっか……」 「ちなみにどんな病気?」 「体がね硬くなって動かなくなっていく病気だよ。進行性で」 「あぁ……」 「知ってるの!」 「あぁごめん。何かで読んできた気がする程度だ。どこだったかな?」  多分、前世だ。筋萎縮性……何だったかな。他にも非ジストロフィー何とか。幾つか在ったはずだ。いずれにしても難病に指定されていて遺伝子の病気……だったかな?  理論物理学者のスティーヴン・ホーキング博士が、いずれかの病気で有名だったな。  レナがガックリと肩を落とす。 「そっか」  あまり追求されなかったことに、ホッと胸をなでおろす。正直、前世云々までは話せないからだ。 「でもそうか。遺伝子の病気か……」  もしかして俺の鑑定能力の解析と分解で直せるのか?  いや分解するんじゃ駄目だ。正常な遺伝子に書き換えないと。そういう能力の進化先ってあるのかな?  うぅん。未知数過ぎて分からん。  でも一応、後でレナの遺伝子を解析させてもらおう。弟さんのも。何時か出来る日が来るかもしれないし。  ……分解ねぇ。もしかしてガン治療とかも出来るのか?  もし出来るのなら鑑定能力。万能じゃねぇか!  俺が一人でウンウン唸っている間にホブスさんの店に到着。レナの案内で奥に通される。 「ホブスさん。レノルさんを連れて来ました」  俺は応接間に通された。  ホブスさんがニコニコだ。 「あぁ。よく来たね。それじゃあさっそく」  そう言って、鍵を渡された。 「これが貸し出す家の鍵だ。私の家の離れを使ってもらう。使用人も通わせよう。家事全般は任せてあげて欲しい」  俺は改めてお礼を言う。 「本当に何から何まで有難うございます」 「ふぁっふぁっふぁ。その件はすでに話し合ったろう。気にしなさんな」  それでもだ。この待遇に胡座は掛けない。というか俺には復讐という目標があるのだ。目的を見失ってはいけない。  俺は、何度目かになるお礼を言って、ホブスさんの元を辞去したのだった。 ※ ※ ※  レナに案内されて、屋敷の離れに訪れた。鍵を挿そうとしたら中からガチャリと開いた。 「お帰りなさいませ」  老婆の家政婦さんが一人。隣には若いメイドさんが2人。俺は思わず戸惑う。 「え、えぇっと……」  老婆の家政婦さんが無表情で言った。 「お話は、お伺しています。レノル様。これからよろしくお願いいたします」 「は、はい」  なんか迫力のある老婆だな。  まぁいいや。 「あっそうだ、レナ」  俺は振り返って、鑑定の能力のことを話す。 「もしかしたら弟さんの病気の治療に必要になるかもだから、レナを鑑定の能力を使って解析したいんだけど良いかな?」  するとレナは何の疑いもなく頷いた。 「え! 治療できるの?」  俺は正直に話す。 「ただ現時点では出来ない。ただの可能性の話ね」  すると彼女は、それでも可能性があるのならと喜んで応じてくれた。 「うん。いいよ。でも何をするの?」 「別に。ただ座っていればいいよ」  俺はサクッと彼女を鑑定する。  データは多いほうが良いので、他にも家政婦さんとメイドさんたちにも協力をしてもらったのだった。
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