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02:急転直下
ガランとした室内。俺はオーランドが担当してる培養室にも顔を出した。しかしそこも空っぽ。
「おい。オーランド! オーランド。居ないのか! フザケてないで出てこいよ。からかっているだろ。なぁ!」
親友を呼びながら各部屋を見て回る。しかしやはり何処にも彼の姿も研究の成果も資料もない。
「どうなってんだ!」
何で何も無い!
何で誰も居ない!
不安が少しずつ、心を侵食し始める。
オーランドが研究を持ち逃げした、と。
「そんなバカな! あり得ない。あり得ないだろ。俺たちは親友で、これまでもずっと一緒にやってきたのに! あり得ない!」
自分の考えを必死で否定する。しかし何処にもオーランドの手がかりがない。だんだんと否定は確信へと変わっていく。
「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!」
あり得ない!
机の天板を思いっきり叩いた。
「くそっ!」
悲鳴を上げた俺はオーランドの行きそうな場所にも顔を出して回った。街なかを走り回る。しかし何処にも姿が見当たらない。
俺は、街の何処ともしれない場所で膝から崩れ落ちる。
「嘘だ。こんなのってないよ。オーランド!」
悲鳴が真昼の太陽が登る空に吸い込まれていく。
「うぅ……」
ポロポロと涙がこぼれていく。悔しい。こんな、こんなぁ!
「うわぁあああ!」
人目をはばかることもなく俺は泣いた。
そして気がつけば自宅に帰っていた。無性に妻のエイミーの顔を見たくなったのだ。彼女に慰めて欲しかった。でも……
家に帰宅した俺が見たもの。それは……
「あれ? エイミー?」
朝は家に居たのに……
そしてキッチンをリビングを。寝室を見て回った。でも何処にも彼女の姿はない。不安が湧き上がってくる。
「嘘だ。買い物に行っているんだよ。きっと」
しばらく待っていれば帰ってくる。
俺は誰も居ないリビングで独り待った。日が暮れて真っ暗になっても帰ってくる気配がない。気がつけば泣いていた。そして朝になった。
しかし妻は帰ってこない。
俺は確かに悲鳴を上げたと思う。でも果たしてそれはちゃんと声になっていたのか。いや。そんな事はどうでもいい。
「エイミー! エイミー!」
何処だ。何処に行った!
「帰ってきてくれ。嫌だ。独りにしないでくれ。帰ってきてくれ! 言う事を聞くから! 生活態度も改めるから! だから!」
俺は再度。愛しい幼馴染の妻の名を呼んだ。
「エイミぃいいいいい!!!!!!」
俺は悲鳴を上げたまま家を飛び出したのだった。
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