02:急転直下

1/1
前へ
/28ページ
次へ

02:急転直下

 ガランとした室内。俺はオーランドが担当してる培養室にも顔を出した。しかしそこも空っぽ。 「おい。オーランド! オーランド。居ないのか! フザケてないで出てこいよ。からかっているだろ。なぁ!」  親友を呼びながら各部屋を見て回る。しかしやはり何処にも彼の姿も研究の成果も資料もない。 「どうなってんだ!」  何で何も無い!  何で誰も居ない!  不安が少しずつ、心を侵食し始める。  オーランドが研究を持ち逃げした、と。 「そんなバカな! あり得ない。あり得ないだろ。俺たちは親友で、これまでもずっと一緒にやってきたのに! あり得ない!」  自分の考えを必死で否定する。しかし何処にもオーランドの手がかりがない。だんだんと否定は確信へと変わっていく。 「嘘だ! 嘘だ! 嘘だ!」  あり得ない!  机の天板を思いっきり叩いた。 「くそっ!」  悲鳴を上げた俺はオーランドの行きそうな場所にも顔を出して回った。街なかを走り回る。しかし何処にも姿が見当たらない。  俺は、街の何処ともしれない場所で膝から崩れ落ちる。 「嘘だ。こんなのってないよ。オーランド!」  悲鳴が真昼の太陽が登る空に吸い込まれていく。 「うぅ……」  ポロポロと涙がこぼれていく。悔しい。こんな、こんなぁ! 「うわぁあああ!」  人目をはばかることもなく俺は泣いた。  そして気がつけば自宅に帰っていた。無性に妻のエイミーの顔を見たくなったのだ。彼女に慰めて欲しかった。でも……  家に帰宅した俺が見たもの。それは…… 「あれ? エイミー?」  朝は家に居たのに……  そしてキッチンをリビングを。寝室を見て回った。でも何処にも彼女の姿はない。不安が湧き上がってくる。 「嘘だ。買い物に行っているんだよ。きっと」  しばらく待っていれば帰ってくる。  俺は誰も居ないリビングで独り待った。日が暮れて真っ暗になっても帰ってくる気配がない。気がつけば泣いていた。そして朝になった。  しかし妻は帰ってこない。  俺は確かに悲鳴を上げたと思う。でも果たしてそれはちゃんと声になっていたのか。いや。そんな事はどうでもいい。 「エイミー! エイミー!」  何処だ。何処に行った! 「帰ってきてくれ。嫌だ。独りにしないでくれ。帰ってきてくれ! 言う事を聞くから! 生活態度も改めるから! だから!」  俺は再度。愛しい幼馴染の妻の名を呼んだ。 「エイミぃいいいいい!!!!!!」  俺は悲鳴を上げたまま家を飛び出したのだった。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加