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 車内にはコーヒー豆の香りが満ちている。土産にとジャスパーが寄越したものだ。彼は町へ残り、しばらくは商売を続けると言っていた。迎えが必要になるほどの深酔いはしないよう努力する、とも。  薄紫色の空に残る星々を見ながら、開通したばかりのトンネルへ入る。抜ける頃には朝日が昇っているだろうか。  願わくば。あのうろこに負けぬほど、美しい光景を見たいものだが。 「…………随分、あてられたな」  アクセルを踏み込む。  胸元へ入れた御守りを、ジャケット越しに握りしめながら。
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