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隣人はパンクチュアルな性質を持っているようで、通常の映画は私が起きているうちに見るが、ムフフな内容のものは私が寝静まるのを待ってから見始めるのが常になった。
映画が早めに始まらない日は、私はそそくさと寝る準備を始めるようになった。
寝る準備をして明かりを消すと、隣の夜行性動物の活動が始まる。
ゾンビに女の子が輪姦される話(推定)、恋人がゾンビ化する話(確定)、ゾンビ同士のエッチ(音がグロい)、などなど、ゾンビはエロとも相性が良いようで感心する。
十八禁コーナーにはゾンビコーナーでもあるのだろうか。
最近では私が物音も立てずにすっかり熟睡しているものと断じたのか、以前は艶っぽいシーンに入ると絞っていた音量もそのままだ。
慣れって恐ろしい。
今日はどんなのを借りてきたのかな?
彼はゾンビに何か恨みでもあるのだろうか、片っ端から借りて来ているきらいがある。
それとも、何かを達成しようとしているのだろうか?
苦行を行う僧侶のようにも思える。
今夜も隣室の深夜のゾンビ映画鑑賞は始まった。
私は、もうそれが当然になってしまったように、壁のいつもの場所に耳をつける。
実は通販で聴診器を買ってみたのだが、それよりこの原始的な方法で音を探る方が興奮することがわかってしまって、聴診器はクローゼットの小箱行きになった。
お決まりのゾンビ登場の効果音が聞こえる。
最近の私は映画よりも隣人の息遣いを追うのに集中している。
……とんだ変態だ。
今日のは今までとはまた違ったテイストで、いつまで経っても男の声ばかりで女性の喘ぎ声が聞こえない。
盛り上がる頃なのだろうが、相変らず肉の飛び散る音ばかりする。
「イヤイヤイヤイヤ、これは無いわぁ……」
独りごちる声が聞こえる。
「勃つ訳がねぇし」
ドスドスと足音の後に、DVDの電源が落とされたようで、隣人の気配しかしなくなる。
「はー、萎えた」
何やらゴソゴソとした音がする。
しばらくすると壁の方に足音が向かい、壁に触れた音がする。
さりっと壁を擦る音が、壁越しに私が息を潜めている場所に向かってジリジリと移動してくる。
私の耳の位置よりも少し上の方で気配が止まり、コツンと何かが触れる音がする。
心臓の音が漏れ出ないように、息を潜めて、身を竦める。
「……さすがに、もう寝てるよな?」
隣の部屋に向けての独り言に、どくりと心臓が鳴る。
壁に耳をつけていなければ拾えないようなくぐもった声だが、壁の直ぐ近くで発せられているようで、骨から伝わり、脳に直接響いているようだ。
「はぁ、もう、酷いのに当たった。今日も慰めて…… リコちゃん」
?!
私は自分の名前を呼ばれた事に戦慄した。
隣人は私の名前を知っている?
身動きも出来ず、私は耳を犯される羽目になった。
ごく近い所で隣人の喘ぎ声が聞こえる。
喘ぐ途中で、途切れ途切れに名前を呼ばれて、自分の体の深い所がぎゅっと引き攣れるように収縮する。
耳をペッタリと壁に押し付けた状態では、少しの動きでも気配を悟られてしまう。
動けないので自分を慰めるわけにもいかない。
私はただ聴覚を犯されながら、下着だけでは済まない程に静かに、尚且つ盛大に秘部を濡らした。
「っ……気持ちいいよ……リコ、リコ……」
隣人は幻の私を犯し尽くし、艶かしい声で果てた。
こんな擬似セックス、興奮しないはずがない。
危うく私は隣人の絶頂する声だけで達しそうになった。
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