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こうして手元にこの本があるのも、魔法の力なのだろうか。
何の気なしにページを捲っていたエリンは、中に栞が挟まっていることに気が付いた。
そのページに何かアレックスからのメッセージがあるのかと思ったが、それらしきものはなさそうだった。
「どちらかというと、こっちね」
エリンの視線は栞に釘付けになった。裏返した栞には、魔法の呪文らしき言葉がびっしりと書かれていた。
「詠むとどうなるのかな……」
そもそも何の力も持たない今の自分が詠唱して、効果は発揮されるのか。
そうは思いつつも、エリンは好奇心とアレックスへの想いを止めることができなかった。
一つ深呼吸をして、逸る気持ちを落ち着かせる。
そうして、静かな声で呪文を詠み始めた。
栞に書かれた呪文が光を放ち始める。
どこからか風が吹いてきて、エリンの腰まである髪がふわりと遊ばれる。
詠唱を終えた頃には、エリンの体はすっかりと眩しい光に包まれ、その姿は誰にも見ることができなくなっていた。
温かな光の中で目を閉じるエリン。
そのまま彼女の意識は深く沈んでいき、光が消えた頃には、エリンの姿はどこにもなくなっていた。
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