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 エリンが目を覚ますと、そこはとある屋敷の中だった。  高い天井に高級そうな調度品。身が沈んでいるベッドは柔らかく、とても気持ちがいい。  このままもう一度夢の世界に旅立ちたいところだったが、自室ではないことを意識した途端、エリンはガバッと起き上がった。 「ここは……」  目の前には幻想的な景色が広がっていた。  調度品が独りでに動いて家事をこなしていたり、窓の向こうでは夕空をドラゴンが泳ぐように飛翔している。 「エリン!」  男性の声に導かれてそちらを見やると、部屋の入口に彼がいた。記憶の中の姿と一致するその人は、間違いなくアレックスだ。  彼がいるということは、やはり……エリンの予想は当たっていた。 「ここは、過去の、かつての私が生きていた世界……!」 「エリン……本当にエリンなんだね」 「アレックス、また貴方に会えるなんて、夢みたい」  そう言うと、アレックスは微笑んだ。 「夢なんかじゃない。僕は君に会える日が来ると、ずっと信じていたよ」  微笑み合った二人は、離れていた時間を埋めるように、きつく抱き締め合った。  二人は運命的な結びつきを感じながら、しばらくそうして温もりを感じていた。 「それにしてもアレックス。時を超える魔法なんてどうしたの? 使える人なんて、ほんの一握りだったはずよ」  すっかりと夜になった頃、二人は屋敷内を歩いていた。 「君にもう一度会いたくて、修行したんだよ」 「私のために……すごいわ、アレックス。ありがとう」 「成功して本当に良かった」  元々優秀な魔法使いだったアレックスのことだ。きっとエリンには想像もつかないような努力と研究の日々だったのだろう。  エリンはそれほどまでに彼に愛されているのかと、胸がじんわり熱くなった。  家族も友達も仕事も何もかも置いてきてしまったけれど、アレックスと会えたのだ。後悔なんてない。  寧ろ、これからもアレックスと一緒にいられることが幸せで仕方がない。その上、これほどまでに愛されている。  自分は何と幸せ者だろうかと、エリンは一気に押し寄せた幸福感に酔っていた。  そんなエリンは、窓の向こうからじっと自身を見つめる影には、まったく気付かないでいた。
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