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 古びた図書館で働く新人司書、エリン。  念願の大図書館での勤務は大変ながらも、毎日充実した日々を送っていた。 「エリンさん、昨日の返却分の対応がまだなの。お願いできるかしら」 「はい、もちろんです」  エリンが目的の棚に向かうと、大量の本が無造作に置かれていた。今からこれらを元の棚に戻していくのだ。 「結構あるわね。まずは仕分け、と……」  本の状態確認をしながらの作業は、量が量だけに思ったよりも時間がかかってしまった。  他にも仕事は山積みだ。エリンは気合いを入れ直して、本を決められた棚へ運んでいった。 「よし、これで最後ね。あれ? こんな本あったかしら?」  見覚えのない本を手に取り、パラパラと中を軽く確認する。  随分と古びた本だ。何語だろうか。エリンには読むことができない言語だ。 「タイトルもわからないし、これ本当にここの本なの?」  首を傾げつつ、本を閉じるエリン。先輩に相談しようと振り返ったその瞬間、うっかり本を落としてしまった。 「いけない!」  慌てて本を拾う。損傷がないか心配する彼女の瞳に、あるページが飛び込んできた。  落とした拍子に開いたのだろう。大きな挿絵のあるページだ。  そこに描かれたイラストに、エリンは釘付けになった。 「この人、私知ってる……。そう、彼はアレックス。私はかつて、この人と恋人だった……」  ぼんやりとした頭で呟いてから、エリンは自身の発言に驚いた。 「今のは、いったい……」  信じられないが、エリンには数々の記憶が蘇っていた。それはすべて、前世の記憶だった。 「私じゃない私の記憶……どうしてこの本に……って、え? 文字が読める!」  先程までわからなかったはずの言語が、どうしてか理解できるようになっていた。  エリンは仕事中だということも忘れて、思い出のアルバムを懐かしむように本を読んだ。  そこにはかつてのエリンとアレックスが深い愛を育んでいたことが記されていた。  エリンが亡くなった後の様子まで書かれていることから、アレックスが記したのではないかと予想された。 「こことは違う世界に生きていたのね」  国も土地も歴史も文化も、何もかもが異なる別世界。  かつてエリンがアレックスと生きていた地は、この世界にはない魔法が当たり前のように使われていた。  アレックスは得意の魔法を使って、この本を作成したのだろう。  本の終わりには、エリンと再び会える日を信じていると記されていた。 「アレックス……」
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