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「ねえ、文幸くん」
「……うん?」
「俺、文幸くんと一緒に幸せになりたい」
「……」
周に真面目な顔で告げられて、とっさに反応できずに黙ってしまった。しかし文幸は、周がちゃんと待ってくれるのを知っている。気持ちを落ち着けて、周に抱きついた。
「俺もです。よろしくお願いします」
「あっ、また敬語になってる」
「……エッチはもう終わったからいいかなって」
「ふふっ、そっか」
「そうですよ」
「航太くんと、悠と、文幸くんと俺。みんなで幸せになりたい」
「はい」
「幸せってなんだろうね」
「……うーん」
俺たちの幸せってなんだろう。文幸はあれこれ言葉を探した。ひと言では言い表せそうにない。
「周さんは、いま、幸せ?」
答えが出ないから聞いてみた。
周が文幸の腕の中にもぐりこんできた。それから顔を上げて笑う。
「すごく幸せ」
「俺も」
「文幸くん、少し寝る? 俺、眠くなってきちゃった」
「寝るならちゃんとパジャマを着てください」
「着なくていい。文幸くんがホカホカしてるから」
「ダメですよ。もう寒いんだから」
脱ぎ捨てたパジャマを探すために布団を抜けようとしたら、ぐいっと引き戻される。文幸も周の素肌の温もりを味わった。
そうしてじゃれあっているうちに眠たくなってくる。このあと目が覚めても、そばに周がいると思うと嬉しい。
お互いの体温を感じながら、文幸と周は満ち足りた眠りにおちていく。
――完――
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