庭師とお嬢様

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“てっきりただの政略結婚なんだと思っていたのに” 「すぐに彼女の気持ちが得られるなんて思っていません。もしかしたら一生俺の片想いで終わるのかもしれません」  けれど、と一呼吸を置くその男を、呆然としながら俺はただ眺めるしか出来なくて。 「俺の持つすべての力を使ってでも、彼女を幸せにしてみせます」 「それを、どうして俺に?」 「……貴方も、俺と同じ気持ちだと思ったから」 “同じ気持ち”  そう言われ、思わず視線を逸らしてしまう。  そんな俺の前にその男は手のひらを差し出して。 「……俺の手は、汚いです」  手だけじゃない、服も汚れているし汗をかいて変な匂いもするだろう。  土も弄るから爪の間だって黒くなっている。 「そうですか?」 「見ればわかるでしょう」  突き放すようにそう言うが、そんな失礼な俺にまだその男は手を差し出したままで。 「貴方は確かに汚れているかもしれませんが、汚くはありません」 「え……」 「汚れは洗えば取れるでしょう」  ズイッと更に手を近付けられて思わず後退ってしまう。 「何故そんなに握手したがるんですか」
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