庭師とお嬢様

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「貴方が恋敵だと思ったからですが……」  まるで戸惑ったと言わんばかりのその返答に、思わず脱力してしまう。 “恋敵と握手? いつの時代の漫画だよ”  目の前の男は、どこか緊張したような面持ちで俺をずっと見つめていて。  お嬢様と歩くこいつの姿を見て、その見た目から遊び人かと思ったそのイメージがガラガラと崩れる。 “生真面目かよ”  こんなに身分が違うのに、ただ一言気に入らないといえば俺なんて簡単にこの家から消すことだって出来るのに。  そんな男は、俺を恋敵と呼び同等に扱うのだ。 “滑稽すぎる”  この男の考えも、そして俺の考えも。  結局俺はその男の手を握ることはなく、彼に背を向けて仕事へ戻ったのだった。  そしてお嬢様と約束の晩。 “そろそろ行くか”  使用人の部屋からそっと抜け出し、向かう先は俺が整備した庭園。  一人佇むお嬢様の姿を見て、苦しいくらい胸を締め付けられる。  好きだ、ずっとずっと好きだった。  だから。 「お嬢様」 「! ……、どうして」  彼女に声をかけるのは、昨日俺に握手を求めたあの男。
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