うつ

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「あ、ウタちゃん」  しばらくすると、向こう側からウタちゃんがくるのだ。  門の向こうには、自転車に跨がってもうこぎ出している女の人。遠くからでも分かる。ウタちゃんのママだ。ウタちゃんとあんまり似ていない。  ウタちゃんはまるでママの存在なんてなかったかのように、とぼとぼと歩いてくる。ウタちゃんの周りだけ夜みたいだ。  ちょっと暗くって、猫背っぽい。私が先生と話しているのを横目に、ウタちゃんはその横を通り過ぎていった。 「暗いね、ウタちゃん」  私はなんとなく、先生に言った。  ウタちゃんが嫌いなわけじゃない。でも、なんとなく。 「うん、可愛くない」  先生は興味なさそうに、そう言った。  それがなんだか怖かった。
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