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「酷いことされたら、うちに戻ってくればいいわ」
「美咲さん私、スナックみさきが好きなんです。辞めたくありません」
「果穂を追い出すみたいで、私も反対よ。果穂は確かにドジよ。だけど果穂の料理はお客にウケがいいし、スナックみさきとしてもダメージがあるでしょう」
未依さんの言葉に目頭が熱くなった。
美咲さんが煙草に火をつける。
「それは私もそう思うわ。でも果穂ちゃんはスナックで接客をするんじゃなくて、料理をすることが好きでしょう。柳川家の家政婦ならうちより幅広く料理を作れる。それに」
美咲さんが口からふぅと、白い煙を吐いた。
「お金は大事よ。開業資金だって充分すぎるくらい準備しないと駄目だからね」
朱音さんと未依さんが唇を少し開きながら、美咲さんの言葉を聞いている。
「朱音と未依は誇りを持って水商売しているわよね。いずれ自分の店を持つにしても、今はうちで顧客を掴むことが大事。一人前になるまで私が面倒を見るわ」
「美咲さん」
朱音さんと未依さんが、キュッと唇を締めた。
「果穂ちゃんの夢は、柳川家で仕事をする方がきっと近づく。応援しているわ」
美咲さんの華奢な手が私の頭に乗り、胸をぎゅうと締め付けた。
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