1.不評な男

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スナックみさきの、茶色いフレームのアンティークな壁掛け時計が、チクタクと時を刻む音がする。 「あなた、意志が強いでしょう。民宿の再生に絡むことなら無敵なくらい。頑張りなさい。帰る場所はいつでもここにあるから」 美咲さんの胸で涙を落とし、強く頷いた。 * 雇用契約書にサインをすると、柳川は連絡先の載った名刺を私に渡して去って行った。 「果穂、頑張れよ」 朱音さんが私の肩を組み言った。 「ドジするんじゃないわよ。そして時々は店に遊びに来なさいね」 未依さんが私の頭をぽんぽんと叩く。 「朱音さん、未依さん、そして美咲さん、大変お世話になりました。楽しくかけがえのない二年間をくださり、本当に本当に、ありがとうございました」 ぼろぼろと涙が止まらなくて、視界がぼやけた。大泣きしながらみんなと抱きしめ合った後、スナックみさきを退店する。 “さようなら”を言うように、店の鈴がカランと鳴った。
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