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2.声を合わせていただきます
大好きな人たちに囲まれながら仕事ができる毎日は幸せだった。
そんな職場を自ら手放してしまうのは結局、私の一番大切なものは“お金”なのだと実感した。
これまで心の中で“柳川”と呼び捨てしていたけれど、今日からは心の中でもきちんと“さん”づけしなければならない。
隣で車の窓を見ている男性は、今日から私の主となる人だからだ。
「ここだ」
柳川さんが言うと、専属の運転手さんが運転する黒塗りの車が、閑静な住宅街の中の、豪邸の前に止まる。
「は、はい」
外観は瓦屋根の日本家屋。でも全く古くはない、現代風にアレンジされた、高級旅館のような造り。
門の扉が開かれると大きな池が現れ、ししおどしがタイミングよくカコンと落ちる。
私の背筋がピシリと伸び、手足の動きがカチコチと固くなった。
最低限の荷物をキャリーバッグに詰め、私は今日、柳川さんの迎えの車に乗り込んだ。アパートにあったその他の荷物は明日、柳川家に届く。
「ここが君の部屋だ。荷物が届くのは明日だったよな。なら勤務は、明後日からでいいだろう」
「はい。よろしくお願いします」
深々と頭を下げる。
「俺の両親も月に一、二度、敷地内の別宅に泊まりに来ることになる。会議を兼ねてでもあるが、定期的に視察をしにやって来るだろう」
「視察、ですか」
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