2.声を合わせていただきます

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「・・・ああ」 一瞬、間があった。その間の意味を掴めず、キャリーバッグの持ち手を何となく握り直す。 「特に両親の前ではあの時のようなヘマをするな。君を家政婦として雇ったが、適性が無ければ否応なしにクビにする」 クビという単語に背筋がヒヤリとした。 「はい。粗相のないよう、精一杯働かせていただきます」 「俺はこれから本社に行く。今日含め二日間は自由に過ごしていい。基本的に自分の家のように過ごして構わない。キッチンも風呂も好きに使ってくれ。食材や備品はこのカードで・・・」 一通り説明を受けた後、柳川さんは背を向けて去っていった。 住み込み家政婦として雇われた私専用の部屋は、今まで住んでいたアパート一室分より広くて、自分が突然お金持ちになったかのような錯覚に襲われる。 (全然、お金持ちじゃないのに) ふぅ、と心の中でため息が出た。 部屋にあった花柄のレースのソファに腰掛けると、全身の力が抜けた。 柳川さんはやはり怖い。どこか偉そうな口ぶりも苦手。 でも雇用契約書にも書かれていた破格の月給を前にすると、どんな試練が待ち受けていようと、やるしかないと思った。 柳川さんの両親が、別宅に時々泊まりに来るといっていたけれど、どんな人たちなのだろうか。
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