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両親がいない私は、お金持ちで両親のいる柳川さんを羨ましいと思ってしまう。嫉妬が混じりそうになってしまうくらい。
両親がいないだけならまだ良い。私を育ててくれた最愛の祖父母も、もうこの世にはいない。
やたら広い、上品で整った、ツクリモノみたいな部屋。気が抜けたら孤独が押し寄せて来る。
暗くたゆたう波に委ねるように、目を閉じた。
ー・・・少しの間眠ってしまったらしい。
目を開けたら時計が視界に入り、時間は昼の十一時半を指していた。
(キッチン、使っていいって言っていたよね)
キッチンの掃除をして、軽食を作ろうと立ち上がる。
柳川さんが用意して下さった自室から廊下に出たタイミングで、玄関の方からガチャガチャと物音がした。
(泥棒?)
恐る恐る玄関の方へ歩く。心臓がバクバクと鳴り出し、額にじわりと汗が滲む。
ガラガラと引き戸が開く音がし、五十〜六十代くらいの、白髪の男性が現れた。
「お前は誰だ」
威圧感のある声だった。柳川さんよりも一段上の。
「あ、あのあの・・・!」
驚きでうるさいくらい鳴く心臓が、私の発言を吃らせる。
眉間に皺を寄せながら、鋭く私を見つめる中年男性。
「明後日から家政婦として働かせていただく、幸田果穂という者ですっ」
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