12.快晴のち、

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「幸田さん」 ツキセイ本社ビルの最寄駅前で、小さく手を振る中町さん。そこから本社ビルの駐車場に行き、ブルーのSUVに私をまた乗せてくれた。 行き先は神奈川県にある、ラーメン博物館。インスタントラーメンの歴史や製造過程等が学べる。初めて行くけれど、イベントに参加する前に自分でもラーメン博物館についてよく調べておいた。 「幸田さんの出番は十四時。それまで時間があるから、雑用になってしまうけど、人手が足りないところの手伝いを頼んでもいい?」 「もちろんです。なんでも任せてください」 首都高を抜け一般道をしばらく走ると、屋根のない赤茶色の外観の、建物の前に到着する。 空は快晴。絶好のイベント日和。 博物館の入り口外に、長蛇の列ができている。テレビメディアや、SNSでのこまめな宣伝が功を奏したのだと思った。 入り口前にいるツキセイフードのキャラクター“ラーメン丸くん”が、子供たちに囲まれている。ツキセイのインスタントラーメンのパッケージ柄の着物を着た、眉の太いニワトリのキャラクター。羽をパタパタと動かしながら、ぴょんぴょん動いていて可愛らしかった。 「どこか人手の足りてないとこはある?」 事務所に入るなり、中町さんが近くにいた女性に訊ねる。 「どの場所を指定していいか分からないくらい、人手は足りてないです。こんな大盛況になるとは、私たちも思っていなかったですよ」
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