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「幸田果穂。柳川家の家政婦の仕事は多岐に渡る。家や庭だけじゃなく、家宝の管理も含まれる。もちろん成仁の身の回りを整えることも仕事だ」
じり、と灰色の瞳が、浅黒く揺らめいたように見えた。
「生半可な仕事は許さない。ただでさえお前は家柄もなく、気品を感じられない。成仁にもきつく言っておく」
「申し訳ありません。一生懸命、勤めさせていただきます」
目をぎゅっと閉じながら頭を深く下げる。
お父様が玄関扉を開け、外に出て行く気配を感じとってから顔を上げた。
幸先の悪さを感じた。だけど家政婦の仕事は、私の夢を叶える近道であることは確かだ。そしてお父様が私に拒否反応を示すのも、当然だと思う気持ちはある。月給が非常に高いのは、それだけの人物を求めているということだ。
(頑張ろう)
掃除をしに真っ直ぐキッチンに向かった。
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