12.快晴のち、

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全てのレシピを無事作り終え、たくさんの拍手に包まれながら私と中町さんと、ラーメン丸くんがお辞儀する。達成感に包まれながら私は額の汗を拭い、ステージを降りた。 そしてステージを降りた先にいたのは、成仁さんで。 中町さんを睨んだ後、私に氷のような視線を投げつけた。 「なんで果穂がここにいる」 久々の再会の、第一声がそれで。 ツキセイの次期社長としては真っ当な台詞だけれど、以前婚約者だった人からの言葉としては、すごくすごく最低だ、と思った。 「家政婦を退職する前に、ツキセイのお手伝いをしたかったので。中町さんはそんな私の希望を通してくださっただけなので、怒らないでくださいね」 私は笑顔を思いっきり作った。だけどきっと引き攣っている。抑えていた怒りがとめどなく溢れて、自分の声に滲んでいた。 「中町。秘書がここまで勝手なことをするのは、許されないことだと分かるよな?」 「はい。申し訳ありませんでした」 頭を下げる中町さんの姿を見たら、ついに怒りが爆発した。 「だから!中町さんは悪くないって言ってます。中町さんを怒るなら私を怒ってください。罰として懲戒免職でもすればいいでしょう。退職金ももいりませんから」 怒りに震えて、ジワリと目頭が熱くなる。 「役目が終わりましたので、ご希望通り去ります。婚約者さんとお幸せに」 「ー・・・幸田さん!」 私はエプロンを脱ぎながら、前だけを見て歩く。このまま真っ直ぐ電車で一人帰ろうと、風を切るように歩いた。
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