12.快晴のち、

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中町さんを通り過ぎて、成仁さんが私の前に立った。そして風に飛ばされたエプロンを手渡してくる。 「次の行き先は決めたのか?」 「・・・はい」 答える必要なんてないはずだけれど、口を開いてしまった私。 「場所はどこだ」 「それは秘密です」 なけなしのプライドがあるので、さすがにそこまでは言いたくない。他の人と結婚する元婚約者に、全部を打ち明ける程私は素直じゃなかった。 「・・・そうか。防犯に強い、きちんとした家に住めよ。そして金が無くなったら言え。今日を含めた一年分の礼と、慰謝料を含めて都度振り込む」 その台詞を言う口調に、嫌味は含まれてなさそうだ。だけど決して気分のいい台詞ではなく、むしろとっても不快。 「そんな施しを受ける程、私は落ちぶれません」 心の中で息を整え、数秒目を閉じてから言った。 「果穂が落ちぶれる等、俺だって思っていない。だが万が一のことがあるだろう」 「万が一のことがあったとしても、貴方を頼る訳がありません」 「・・・そうだな」 眉を一瞬ひそめて、私から目を逸らした成仁さん。 「引越しの手伝いもできずに悪いな。だが果穂が松濤の家を出る日は、中町に行ってもらう。荷物の運びや、家の鍵の引き取りなどは任せた」 「はいはい」 中町さんが肩を下げて、曖昧に微笑んだ。
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