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「あーあ。僕ってなんだかんだ、お人好しなんだろうな。そして結局、あの人の忠犬やっちゃってるわ」
中町さんが車のハンドルを握り、半分目を細めながら言った。
「幸田さんに、気持ちを受け取ってもらえないの分かってるんだけどさ。柳川さんが頼れなかったら、僕を頼っていいから。いつでも、だよ」
「中町さん、お優しいですね。ありがとうございます」
「ははは」
人差し指の付け根で鼻先を触りながら、中町さんが笑う。
「絶対色々分かってないよね、幸田さん。でもまぁ、いいや。今日はとても楽しかったよ。色んな意味で忘れられない一日になりそう」
「私もです」
そう私も、色んな意味で、忘れられはしないだろう。
「疲れちゃったね。本気で帰ったら、何もせずに玄関先で寝ちゃいそうだよ」
「あはは。私もそうなりそうです」
「でも今日は大成功だったよ。これで会社も、少しずつ良い方向に行くと思う。僕からも本当にありがとう」
「こちらこそありがとうございました」
中町さんが松濤の家まで送ってくれた。
「じゃあ次は、引越しのお手伝いにまた来るよ。お疲れ様」
「本当に色々とありがとうございました。気をつけて帰ってください」
道中で買った、私がリクエストした牛丼が入った袋を片手に、車が見えなくなるまで手を振った。
体はぐったり疲れていたけれど牛丼は全部食べて、それからシャワーを浴びて歯を磨く。日曜日だから家政婦の仕事はお休みだしと、気にせず早々と就寝させてもらった。
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