12.快晴のち、

18/19
前へ
/344ページ
次へ
「果穂ちゃん」 「果穂ー!」 皆が駆け寄ってくれて、私たちはそれぞれお互いを抱きしめあった。 「最後にちょっとお茶していきなさい。お菓子用意しているのよ」 「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」 BGM代わりにテレビをつけながら、私たちはこれまでの思い出を語り合う。楽しい時間は早々と過ぎていった。 (お弁当はもう、食べ終わったかな・・・) 最後の最後まで元主のことを考える私は、相当な愚か者だろう。 『ー・・・緊急速報です。千代田区にあるツキセイフード本社ビル外で、発砲事件がありました。ツキセイフード株式会社の現副社長、柳川成仁氏が被害に遭い、意識不明の重体です』 スナックの店内がしんと静まり返る。自分の心臓が止まったと本気でそう思うくらい、息ができずにいた。誰も言葉を発せず、ただテレビに釘付けになるしかなかった。 『警察は現場にいた野崎(のざき)綺羅(きら)二十七歳に事情聴取をしています』 いてもたってもいられなくなった私は、スナックみさきを飛び出そうとする。 「どこ行く果穂。今ツキセイ本社に行ったって警察に追い返されるだけで、何にもならないぞ」
/344ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4393人が本棚に入れています
本棚に追加