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浴室の前の、洗面台のある部屋がまず、温泉施設の脱衣所くらいに広い。洗面台は石造りで、大きな鏡がついていた。水は自動でライトまでついている。
圧倒されながら浴室の扉を開ければ、温泉みたいな広い浴槽があった。
(温泉はひいてないよね。さっき湯船のスイッチ入れたもの。何もかも違いすぎる・・・)
頭や体を洗い終わると、石のタイルを踏みながら浴槽へ向かった。
右足から湯船に入ると、ぶくぶくと泡が出ている。ジャグジー付きだった。
(うー・・・疲れたな)
泡が背中のツボを押してくれて気持ち良い。
祖父母の民宿も古いながら、檜造りでジャグジーがついていたのを思い出す。民宿のお風呂はこんなに広くはなかったけれどとても気持ち良くて、居心地も最高だった。
だけど民宿はもうない。
新型の感染症が世界に広がり、日本も外出は控えなければならないと、自粛ムードが三年に渡って続いた。
客足が遠のく中、何とか営業を持ち堪えた矢先、祖父が心臓発作で亡くなり祖母は民宿を畳んだ。
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「ばあちゃん、民宿続けよう。私も手伝うから」
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