1.不評な男

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「お疲れっすー」 スナックみさきの従業員の一人、朱音(あかね)さんが出勤してきた。大きなお団子の形に髪をまとめて、いつも黄色やピンク等、明るい色のワンピースを着ている。 「おー、果穂は料理上手だな。さすが」 バシバシと私の背を朱音さんが叩いた。 「できるのは料理よ、料理。昨日もグラス割ったんだから」 「すいません、未依(みより)さん」 「今日はしっかり接客するのよ」 一重瞼で涼しげな目元をした、しっかり者の未依さんは、お客様からアジアンビューティーと言われている。 「店開けて頂戴」 美咲さんの言葉に「はい」と返事する。戸の鍵を開け、“商い中”と書かれた木札をかけた。 スナックみさきに通うお客様の層は厚い。打ち上げ終わりにしっぽりと飲むお客様から、わいわい話したり歌ったりするお客様、それからそれぞれの従業員目当てに通うお客様ももちろんいる。 私を除く従業員はみんな、多くの固定客を抱えていた。 「果穂ちゃん、ビールお代わり」 常連客の小林さんが言う。 「はーい」 空のビールグラスを笑顔で片付けた。
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