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「あの、報告させていただきたいことがあるのですが」
「なんだ」
澄まし顔で味噌汁を飲んだ後、柳川さんが返事をする。
「一時間前にも様子を見に行ったのですが、池の白い鯉が元気がありません」
「白い鯉・・・ああいたな。俺がアメリカから帰国するまで、父と母が時々来て餌をやっていたみたいだが、その鯉は恐らく寿命だ。二十年前からあの池にいるらしい」
「そうなんですか。あの、明日動物病院に連れて行ってもいいですか?」
「鯉をわざわざ病院に連れていくのか?天命に任せればいいだろう」
面倒そうな口ぶりで柳川さんが言った。
「でも鯉って、平均寿命は二十〜三十年みたいですけど、長生きする鯉は二百年生きるみたいです。病気かもしれませんし、念のため連れて行ってあげたいです。もちろん経費ではなく、自分の財布から出します」
柳川さんの眉がピクリと一瞬吊り上がる。
「何故わざわざそこまでする。自分のペットでもない、愛着もないであろう鯉に」
「だ、だって可哀想だったんで」
「可哀想、それが本音か?理解できないな」
普段よりさらに鋭くなった瞳が私に向けられた。
「うわべを飾り立てた言葉で俺にそんな媚を売るとは、家政婦の給与が足りないのか」
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