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料理以外はてんで駄目だというのを、自分でよく分かっていた。それなのに家政婦の仕事を引き受けて、二週間も経たないうちにやらかす。お風呂で寝てしまったことだってそうだ。
「申し訳ございません。すぐに片付けます」
ガラス片を拾い上げビニール袋に入れる。
「素手で拾うな。怪我をする」
柳川さんが私の手首を掴む。私は人差し指の腹をとっくに切っていた。血が滲む指を見て、自分の出来の悪さに情けなくなるのだった。
「大丈夫です」
「大丈夫じゃないだろ」
柳川さんが私の手首を掴んだまま「水で洗い流せ」と、キッチンの流しへと連れて行く。私が指を水につけている間に、消毒液と絆創膏を持ってきてくれた。
柳川さんがガーゼで消毒液をつけてくれる。
「・・・ありがとうございます」
「絆創膏は自分で貼れるよな。皿の片付けはやっておく」
「お気持ちは嬉しいのですが、私自身で片付けさせてください。あの、それから・・・」
「なんだ」
相変わらず、柳川さんの瞳は鋭い。
「きちんと言っておかなければならないと思いまして。家政婦の仕事を引き受けたのは申し訳ありませんが、お金のためです」
「それが普通だろう。何もおかしいことではない」
「自分に家政婦が務まるのか自信がない中、月給に目が眩みました。私は、姑息な人間です」
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