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息を飲み込み、再度口を開く。
「だけど鯉を病院に連れて行きたいと思ったのは、貴方に媚を売るためではありません」
目を三度瞬いた。
「私はあの鯉が死んでしまうところを見たくなかっただけです。もっと長く生きられる可能性があるかもしれないのに、何の手立てもせず見過ごすことは考えられませんでした」
小さく息をついた。
「あんな風に言われてとても頭にきました。でも・・・。冷静になれば、柳川さんにそんな風に思われても仕方ない動機で、家政婦になってしまいました」
その場にしゃがんで膝をつき、頭を下げる。
「申し訳ありませんでした。今日をもって家政婦の仕事を、退職させてください」
“仕事ができなければ人材を替えればいいだけ”
久徳様もそう言っていた。私が辞めたところで、代わりはすぐ見つかるだろう。
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