1.不評な男

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フライパンにごま油を熱する。チャーハンの卵は、私はご飯と一緒に入れる派だった。米粒にきっちり卵が纏った、しっとりチャーハンが好き。 白飯と同タイミングで溶き卵を入れて炒める。 祖母が昔、お昼によく作ってくれたチャーハンも、しっとりしていたことを思い出した。 最後に刻んだ高菜を加え、炒めれば出来上がり。 「お、お待たせしました」 高菜チャーハンを盛ったお皿を持つ手がプルプル震える。重さから来るのではなくて、男のオーラに圧倒されているからだった。 男は黙ったまま食べ始める。ひとつ瞬きした後、スプーンを運ぶ手を一回、二回と重ねる。終始無言でゆっくりと食べていた。 「み、美咲さん」 「うん?」 美咲さんの耳元に口を寄せる。 「だ、大丈夫ですかね。あの人怒らないでしょうか」 「どうして?」 「飯がまずいって・・・」 笑みひとつない固い表情がそう思わせる。 「いいえ。顔には出ないけれど、果穂ちゃんの料理を気に入ったみたいよ」 「え」 もう一度客席に視線を動かしたら、眼鏡の男性客がニヤニヤと、成仁と呼ばれる男の方を見て笑っていた。 「珍しいじゃん、お前が飲み屋でしっかり飯食うの。よっぽど気に入ったんだな」 眼鏡の男性客の言葉に、男は返事をしなかった。
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