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一時間と半分程、男性二人は飲んでいただろうか。
「お会計お願い」
明るく笑う眼鏡の男性客は、古谷一という名だと、ご本人から教えてもらう。古谷さんは主に美咲さんと楽しく会話しながら、陽気に飲んでいた。
会計が終わると二人は背を向け、入り口の戸を開ける。すると最後黒髪の方・・・柳川成仁がこちらを振り返ったものだから目が合った。
自分の体が、芯まで凍ってしまいそうになる程の視線だった。
「二年ぶりでも感じの悪さは健在だったわね」
店の営業が終わり、朱音さんが顔の前でパタパタと手を仰ぐ。
「こら。そういうこと言わない」
美咲さんが煙草を吸いながら嗜めた。
「私も柳川さん、何考えてるか分からないから苦手。古谷さんの方がいいわ」
未依さんもきっぱりとした口調で言う。
スナックみさきでは、柳川成仁は不評のようだ。
「みんな怖がるけれど、私はそんなことないと思うんだけれどねー」
美咲さんが目を細めて煙草の煙を吐いた。
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