1.不評な男

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一時間と半分程、男性二人は飲んでいただろうか。 「お会計お願い」 明るく笑う眼鏡の男性客は、古谷一(ふるやはじめ)という名だと、ご本人から教えてもらう。古谷さんは主に美咲さんと楽しく会話しながら、陽気に飲んでいた。 会計が終わると二人は背を向け、入り口の戸を開ける。すると最後黒髪の方・・・柳川成仁がこちらを振り返ったものだから目が合った。 自分の体が、芯まで凍ってしまいそうになる程の視線だった。 「二年ぶりでも感じの悪さは健在だったわね」 店の営業が終わり、朱音さんが顔の前でパタパタと手を仰ぐ。 「こら。そういうこと言わない」 美咲さんが煙草を吸いながら(たしな)めた。 「私も柳川さん、何考えてるか分からないから苦手。古谷さんの方がいいわ」 未依さんもきっぱりとした口調で言う。 スナックみさきでは、柳川成仁は不評のようだ。 「みんな怖がるけれど、私はそんなことないと思うんだけれどねー」 美咲さんが目を細めて煙草の煙を吐いた。
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