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第三話 罠を仕掛けて
怪談話を募集していたところ、TwItterのDMにHさんという方から連絡があった。Hさんは本業以外に猟師としての顔を持つという。
一方的に長文が送られてきた。どう返信しようかと思案しているうちに、Hさんのアカウントが削除されてしまって連絡が付かなくなった。
真偽が不明で詳しい場所もわからないが、こちらで要約して記すことにする。
Hさんは自分の山を持っていた。
先祖のどこかの代で購入し、それを相続してきたのだという。
狩猟の免許も取得しているHさんはその山で銃によって猟をするだけでなく、罠を仕掛けて獲物が捕まるのも待っていた。鹿などがかかるのだそうだ。
狩猟期間の終盤にあたる2月、Hさんは仕掛けておいた罠に何かがかかっていないかを見るため、山へと向かった。
早朝の6時に山へ赴く。小雨が降っていた。
山に近づくほどに気温が下がっていくように思える。道の脇にうっすらと雪が溶けずに残っている。
山へ着き、罠を仕掛けておいた場所まで移動することになる。
前日から降り続いていた雨は弱くなってはいるものの、草木を分け入る必要があるため、服がすぐに濡れだした。
不快感を覚えつつも、毎度のことだとHさんは割り切って先を急ぐ。
ただ、なぜかこのとき心臓の鼓動がいつもよりも早かったような覚えがあった。
獣道を進み、罠の場所まで行き着いた。
しかし誤算があった。
罠に何かがかかっていた。ただ、動物ではなかった。
人間であった。
コートを着た男性と思しき身体が倒れている。
Hさんの罠は、輪っかの中に足を入れたらバネの力でワイヤーが締まり、足を取られるというものだった。バネ式くくり罠などと呼ばれるものらしい。
遺体の右足にもその罠が発動しておりワイヤーが巻き付いていた。
高い位置でくくられたらしく、ワイヤーは膝の辺りに巻かれた状態だったという。
遺体は一部が白骨化しており、動物に食い荒らされたような跡もあった。外傷が多く少し見ただけではなぜ亡くなったのかが判別できない。
Hさんは慌てて、来た道を引き返した。
DMに書かれていたのはここまでである。
自分の山で自分の仕掛けた罠にはまった遺体が見つかった以上、警察に連絡するのが当然の流れかと思われる。
しかし遺体についてどうしたかという顛末は記されていなかった。
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