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第八話 幽霊が映る道具
投稿ものの心霊ドキュメントDVDに自分の投稿した動画が採用されたことがあるというSさん。
彼は秘密兵器を持っているという。
あるものを携えて動画に映ると、その間には幽霊が画面に映り込むというのである。つまり、それさえあれば心霊動画が撮り放題ということだ。
「手に持って近所の公園をうろついてるところを、友達に撮影してもらったんだ」
30分ほどの動画になったが、至る所に手や足が映り込んだのだそうだ。
特に革靴を履いた何かの足だけがSさんの方へ歩いてくるのを動画で見ると、さすがに背筋が凍りそうだったという。
動画を確認して撮れ高が十分と判断したSさんと友人は、さっそく心霊動画の編集部宛てにそれを投稿した。
結果、採用されたのは当人達にはおめでたいことだった。しかしこれを話してくれたSさんの表情は冴えない。
「いざDVDを観てみると、大幅にカットされていたんだよ」
30分の動画に霊が映りすぎていて、ちょっと手が出てきた程度の場面は収録されなかったのである。
『この他にも多数、霊らしきものが映り込んでいたが割愛する』という趣旨の意書きが入ったそうだ。
「霊からしたらせっかく出てきたのに、浮かばれないね」
そうSさんは締めくくった。
なお、Sさんが手に持っていたそれというのは、古びた手鏡であった。いつからか家にあったものだそうだ。
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