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最終話「紅-くれない-の世界で」
夕暮れ時、家に帰る前に黒蝶と姫菜は、潮風に吹かれながら海を見ていた。
姫菜の赤い髪が潮風になびく
「サラちゃん、元気になるといいね。また、お見舞いに行こうね。」
姫菜が黒蝶に笑いかける。
「ああ、サラも喜ぶよ。ありがとな」
ドキ……
姫菜の優しさと、笑顔に黒蝶の胸は高鳴り頬が赤らむ。
(なんだこれ…こいつ、こんなに可愛かったか?)
姫菜はいつもと、様子がおかしい黒蝶に気がついて、からかおうとしたが
今日はなぜか、黒蝶のことを意識してしまって、いつもの調子が出ない。
「レオ、夕日綺麗だね。」
「ああ、陽が海に反射して……お前の色に、皆くれないの色に染まってる。お前も、俺も」
キザなセリフに、自分らしくないと思いながらも、ふたりの距離が縮まっていく。
黒蝶の指が姫菜の指に触れ、おたがいの手が重なってゆく。
「なあ、姫菜。サラもお前と仲良くなれたみたいだし、そろそろ俺達さ……」
その言葉に応えるように姫菜は口を開いた。
「いいよ、あたし。レオだったら付き合っても」
「えっ!?」
「えっ?」
黒蝶は、驚きすぎて姫菜の顔を覗き込んだ。
「なに、その顔。そう言う意味じゃないの? レオの言いたいことって。はっきりしなさいよ~~!!!」
「分かった……。お前がそのつもりなら」
黒蝶はひざまずいて、姫菜の片手を取り手の甲にキスをした。
「はっ? レオっっ!?」
頬を染めて、慌てふためき、変な裏声になっている姫菜に黒蝶は、大人っぽい微笑を浮かべこう告げた。
「くれないの姫君、私のフィアンセになって頂けますか?」
「えええ! ふぃあんっっ!?」
そう来るとは、思ってもみなかった姫菜は、面食らってしまった。
黒蝶は、次の瞬間には姫菜の手を引き、抱き寄せて唇にキスを落としていた。
触れるだけの優しいキス、黒蝶自身ももちろん姫菜もファーストキスだった。
ふたりの唇が離れると、姫菜は潤んだ瞳で黒蝶を見つめた。
しかし、突如甘いムードをぶち壊すような声が後ろの方から聴こえた。
「きゃあ~姫菜、黒蝶くんっ。あんた達……!」
ふたりが、肩を震わせて振り向くと、亜矢音がニマニマ笑いながら腕組みをして、立っていた。
「ぎゃーっ、アヤ姉! いつから、そこにいたの!?」
姫菜が真っ赤になって叫びながら聞くと、「さあ、いつからかしらねえ~?」と亜矢音は、しらばっくれた。
「見られた…お姉さんに見られた…!」
黒蝶は、ゆでだこのように真っ赤になって、ショックを受けている。
「ア・ヤ・姉えーーー!!!」
姫菜は怒って、亜矢音を追いかけ始めた。
姫菜の怒声でショックから立ち直った、黒蝶は姫菜を見ながら
「ふはっ! やっぱ、目が離せないよ。お前は!」と笑った。
-END-
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くれないの色2完結しました。
ありがとうございました。
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