最終話「紅-くれない-の世界で」

1/1
前へ
/5ページ
次へ

最終話「紅-くれない-の世界で」

夕暮れ時、家に帰る前に黒蝶と姫菜は、潮風(しおかぜ)に吹かれながら海を見ていた。 姫菜の赤い髪が潮風になびく 「サラちゃん、元気になるといいね。また、お見舞いに行こうね。」 姫菜が黒蝶に笑いかける。 「ああ、サラも喜ぶよ。ありがとな」 ドキ…… 姫菜の優しさと、笑顔に黒蝶の胸は高鳴り頬が赤らむ。 (なんだこれ…こいつ、こんなに可愛かったか?) 姫菜はいつもと、様子がおかしい黒蝶に気がついて、からかおうとしたが 今日はなぜか、黒蝶のことを意識してしまって、いつもの調子が出ない。 「レオ、夕日綺麗だね。」 「ああ、陽が海に反射して……お前の色に、皆くれないの色に染まってる。お前も、俺も」 キザなセリフに、自分らしくないと思いながらも、ふたりの距離が縮まっていく。 黒蝶の指が姫菜の指に触れ、おたがいの手が重なってゆく。 「なあ、姫菜。サラもお前と仲良くなれたみたいだし、そろそろ俺達さ……」 その言葉に応えるように姫菜は口を開いた。 「いいよ、あたし。レオだったら付き合っても」 「えっ!?」 「えっ?」 黒蝶は、驚きすぎて姫菜の顔を覗き込んだ。 「なに、その顔。そう言う意味じゃないの? レオの言いたいことって。はっきりしなさいよ~~!!!」 「分かった……。お前がそのつもりなら」 黒蝶はひざまずいて、姫菜の片手を取り手の甲にキスをした。 「はっ? レオっっ!?」 頬を染めて、慌てふためき、変な裏声になっている姫菜に黒蝶は、大人っぽい微笑を浮かべこう告げた。 「くれないの姫君、私のフィアンセになって頂けますか?」 「えええ! ふぃあんっっ!?」 そう来るとは、思ってもみなかった姫菜は、面食らってしまった。 黒蝶は、次の瞬間には姫菜の手を引き、抱き寄せて唇にキスを落としていた。 触れるだけの優しいキス、黒蝶自身ももちろん姫菜もファーストキスだった。 ふたりの唇が離れると、姫菜は潤んだ瞳で黒蝶を見つめた。 しかし、突如甘いムードをぶち壊すような声が後ろの方から聴こえた。 「きゃあ~姫菜、黒蝶くんっ。あんた達……!」 ふたりが、肩を震わせて振り向くと、亜矢音がニマニマ笑いながら腕組みをして、立っていた。 「ぎゃーっ、アヤ姉! いつから、そこにいたの!?」 姫菜が真っ赤になって叫びながら聞くと、「さあ、いつからかしらねえ~?」と亜矢音は、しらばっくれた。 「見られた…お姉さんに見られた…!」 黒蝶は、ゆでだこのように真っ赤になって、ショックを受けている。 「ア・ヤ・()えーーー!!!」 姫菜は怒って、亜矢音を追いかけ始めた。 姫菜の怒声でショックから立ち直った、黒蝶は姫菜を見ながら 「ふはっ! やっぱ、目が離せないよ。お前は!」と笑った。 -END- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ くれないの色2完結しました。 ありがとうございました。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加