第10話(BL特有シーン・回避可)

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第10話(BL特有シーン・回避可)

 腹を決めてしまえば迷わない。  霧島は潔く全てを脱ぎ晒してからベッドに上がる。そしてベッドのヘッドボードの棚からトワレのガラス瓶を取ると胸に一吹きした。  愛用の香りはペンハリガンのブレナムブーケである。京哉も大好きな匂いなのだが、現場に匂いは残せないので普段はつけない。だが行為の時だけは香らせているのだ。  本当に切なげに見上げてくる京哉の上衣を脱がせる。そしてベルトに手を掛けた。 「ああ、いい匂い。忍さん……お願い、きて……んっ」  何もしないうちに京哉は吐息を不規則にしている。下半身をうねらせている京哉を目の当たりにして霧島は躰が熱くなるのを感じた。煽られて霧島までが吐息を荒くする。目前の細い躰は既に快楽を貪っているかのように揺れ動き、霧島を誘っていた。  ゆっくりと霧島は京哉のベルトを緩めた。スラックスと下着を一度に押し下げて足を抜かせる。すると勃ち上がり切って蜜に塗れ濡れたものが露わになった。 「お前、ここまでして……そんなに私が欲しかったのか」 「だって、んっ……ずっと、忍さんに触りたくて」 「すまん、こんなになるまで我慢させた。もう私も我慢できんからな」  それを聞いて京哉はふわりと笑ったが次には再び切ない目をして喘ぐ。九天なる媚薬が相当効いているらしい。パーティー会場を出る前から様子がおかしい気がした。  身悶えする躰を押し開くように膝を立てた細い脚を大きく広げさせる。枕を背に置いて細い腰を突き出させ、うしろの淡い色づきを露出させ京哉の熱いものを握った。途端に細い躰は跳ねて熱いものは一層硬くなる。同時に京哉は高い喘ぎを放った。 「ああっ……く、ふ……はぁんっ!」  あまりの感度の良さに可哀相になって握ったものを扱き始める。優しく、きつく、緩急をつけて扱くと、しなやかな白い躰が弓なりに反った。喘ぐ耳元に囁いてやる。 「これで一度いっておけ、少しは楽になるだろう」 「んんっ……ん、あぅん……忍さん」  快感を逃すまいと京哉は躰をうねらせ、枕で高くした腰をもっと浮かせて大胆に突き出し揺らしていた。目尻から堰を切って零れる涙を前に、じらすなどという駆け引きも一切せず、霧島はいかせることだけを考えて京哉を擦り続ける。  京哉も淫らに腰を前後させていた。霧島が握り扱く京哉が一際硬く張り詰める。堪らない快感で京哉は身を反らした。 「やっ、あっ……忍さん、あっ、ふ!」 「いいから、いけ」 「んっ……いく、いっちゃう、はうっ!」  京哉は霧島の手の中に驚くほど大量に放っていた。腰を枕に落として弛緩した細い躰はいかにも無防備で嗜虐心を煽られる光景、霧島は今すぐ己のものを捩じ込んでしまいたくなるのを危うく堪える。己も刺激を欲する想いを抑えて京哉をじっと見た。  薬の影響がどのようなものか暫し様子を観察していたが、京哉の躰の中心は硬く張り詰め、蜜を零し続けていて一向に萎える気配がない。こうなると媚薬の効果も一種の責め苦だ。  何度いっても京哉相手なら萎えを知らない、普段から規格外の霧島とは違うのだ。二、三度で殆ど何も零せなくなるのが通常の京哉には負担だろう。  僅かに膝を立てて脚を大きく広げた間に座り、固く閉じた蕾にそっと触れる。京哉は身を震わせて蕾をひくつかせた。霧島の指先を欲しがっているのは明らかだ。拒否ではなく完全に咥え込もうとしている。己の右手指を霧島は口に含み、たっぷり唾液で濡らした。 「京哉、こっちもいいな?」 「んっ、お願い……そこも、思い切り、いっぱいして――」 「思い切りしてやるからな、待っていろ」  悶える躰に濡れた中指を僅かに食い込ませた。濡らした長い指は難なく受け入れられて霧島は内襞をなぞる。そして呼吸を浅く速くした京哉が息を吐いたとき、霧島は根元まで指を挿し入れていた。長い指先で届く限りの奥まで触る。  擦っては突き、抉り、入り口を指の根元で緩めた。受け入れさせるために必要なことだった。 「あっ……忍さん、はぁん……ああっ!」  苦しげな喘ぎが苦しいのではないことを知っている霧島は、挿し込んだ指先で奥を抉るように掻き回す。与えられる鋭い快感に京哉は甘く高く鳴きながら、腰を捩るのを必死で我慢しているようだ。だが性急に増やされる指を次々に根元近くまで呑み込んでゆく。  通常なら男性同士の行為には人工的な潤滑剤が不可欠だが、京哉は使ったことがない。使わせたことがないと言った方が精確か。初めて霧島が何の隔てもなしにひとつになりたいと思った相手が京哉で、そんな風に霧島が京哉の躰を馴らしてしまったのだ。  だから京哉は人工的な物を嫌がり、また怖がる傾向にある。  大体、霧島は過去に素のままで触れ合いひとつになりたいとまで思った相手はいなかった。セオリー通りに感染症予防に着ける物は着けていたし、それなりの人工物を使用しなければ行為に至れなかったというのもある。つまり受け入れさせると相手が怪我をするという、霧島側の問題だ。  だが京哉と初めての時は半ば無理矢理抱いてしまい、案の定傷つけてしまったものの手応えを感じ、それ以降もそのまま受け入れて貰えることが嬉しくて、そのまま京哉に甘えている状態である。  霧島が馴らし霧島しか知らない経験の浅い京哉に対して、ずるいような気もしているが、様々な案件で敵に拉致された際などに嬲られた京哉は、やはり人工的な物を嫌うのだった。  そこにきて京哉は霧島を受け入れられるほどでありながらも、どんなに霧島が攻め抜いても初めてこじ開けた時と変わらない状態を保って常に受け入れてくれる。もし一生できなくても霧島は変わらず京哉を愛するが、事実として溺れるに足る躰だ。 「んんっ……あっん、忍さん。あぅんっ!」  長めの髪を乱して喘ぐ京哉が狭いそこに数指を咥え込んでいる光景は、霧島が腹に溜めた情欲を灼き焦がさんばかりに煽った。もう京哉の体内はぬるみ切っていた。  指が粘性のある淫らな水音を立てて霧島を疼かせる。充分に柔らかく広げた蕾から指を抜いた。膝立ちになった霧島は濡れそぼったそこに熱く滾ったものを押し当てる。  そこは収縮し霧島を誘っていた。蜜を塗り込んで切っ先を僅かに食い込ませる。 「入るぞ、京哉。いいな?」 「きて、あっ……あっ、あっ……ああん、はぅんっ!」 「……京哉、お前――」  容赦なく突き入れてしまい、霧島は己を半ば以上京哉に挿し入れてしまっていた。その挿れられた衝撃で京哉はまた迸らせてしまっている。抑えようもなく何度も細い躰は痙攣し自らの喉元近くまで飛び散らせた。  だが達してなお躰の中心は熱く硬いままである。体内に霧島が存在するだけで京哉を寒気のような快感が絶え間なく襲っていた。  気が遠くなりそうな快感の波に揉まれ涙でぼやけた視界に愛し人を捜す。震える涙声で京哉は懇願した。縋れるのは霧島しかないかった。切なくて、つらくて、淋しくて堪らない。 「んっ……忍さんと、一緒に……ああんっ!」 「分かった、一緒に私もいかせてくれ……動くぞ」 「あっ、ふ……忍、さん……おね、がい……っん!」  感情の制御ができず、端正な顔を見上げながら半ばしゃくりあげてしまい、殆ど言葉ならなくてもどかしかったが、霧島にはちゃんと伝わって灰色の目が頷く。  と、霧島が腰を引いた。鋭い粘膜の擦過で京哉に腰が蕩けるような快感が訪れる。次には激しい突き上げで悲鳴のような喘ぎを洩らした。霧島は繋がりが解ける寸前ま太いものを引き抜き、今度は太すぎる根元までを突き入れている。  悲鳴すら出せないほどの衝撃と快感が続く。京哉のそこを霧島は本気で擦り上げ、抉っては捩っていた。あまりの快感で京哉は暴れる。  その暴れる京哉にのしかかって押さえつけ、霧島は激しく攻め立てた。  お蔭で律動はいつしかベッドを軋ませるほどになっていた。 「やっ、あ……忍さん、いい、そこ、もっと……ああんっ!」  激しく揺らされながら京哉は淫らに自ら乞い、悶えて眩暈のような快楽に身を浸した。もう自分が暴れていることも分からない。取り憑いた疼きがいつまでも薄まらず縋れるのは霧島だけ、飽くことなく我が身の内を擦る灼熱の太い楔だけなのだ。  激しすぎる攻めを受け入れながら、いつしか腰を浮かせて霧島とぶつけ合っていた。 「あっ、ん……忍さん、僕の、忍さん……はぁん!」 「京哉、こうしてるのは媚薬などではない、私だぞ」  低い声を響かせた霧島が京哉の体内にくっきりと形を刻む。粘膜が破れそうなくらい張り詰めていた。最愛の年上の男とこれ以上なくひとつになり、京哉は幾度も淫らに内襞で締めつけ霧島を呻かせる。巻きつき絡んで誘い込み、霧島をも快楽の淵に堕とした。  完全に溺れ切った霧島も京哉にあらゆる姿態を取らせては、そのたびに先端で奥を激しく突く。捩じ込み抱き締めて上に乗せ、揺さぶってはまた昇り詰めさせていた。
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