第16話(BL特有シーン・回避可)

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第16話(BL特有シーン・回避可)

 疲れすぎて本当にどうかしてしまったのではないかと心配が湧く一方で、適度に疲れた霧島は反応してしまっていた。見上げてくる黒い瞳に湛えられた情欲に吸い寄せられるようにベッドに上がり、ブレナムブーケを胸に吹く。柑橘系の清潔感ある香りが満ちた。 「ああ……いい香り。忍さん、キスして。それで僕に触って」  いつにないこの積極性の原因は何だろうかと訝しく思いながらも素直に嬉しくて、霧島は京哉の唇を噛みつくように奪う。すぐに応えて開かれた歯列から舌を潜り込ませ、届く限りを舐め回した。痛みが走るほど舌を吸い、唾液を要求して京哉の口内を蹂躙した。 「んんぅ、ん、んんっ……っん、はあっ! 忍さん、愛してる」 「私も愛している……お前、こんなに私が欲しかったのか?」 「だって、ずっと我慢してたんです。忍さんが欲しい、ああ――」  言葉以上に京哉の躰が物語っていた。熱く硬く張り詰めさせただけでなく蜜をまといつかせている。触れただけでぬめりが糸を引くほどだ。  それを目にして霧島は己にも血が流れ込み、急激に成長させてしまったのを感じた。バスローブを脱ぎ捨てると細い躰にのしかかって組み敷く。きめ細かな白い肌と象牙色の肌を擦った。  全身で擦り合い愛撫していると京哉が更にその先を欲しがって身を反らし細い腰を持ち上げる。そこで一旦退くと霧島は己の右手指を口に含んだ。たっぷりの唾液で濡らした指を翳して京哉に見せつける。黒い瞳は濡れた数指を映し、羞恥より期待に潤ませた。 「京哉、入れるぞ。いいな?」 「下さい……欲しい、お願いです……思い切り掻き回して」  自ら膝を立てた脚を開いた京哉は、腰を浮かせて淡く色づいた蕾も露わなあられもない姿態を取った。蜜を零しているのが可哀相で霧島はじらさず長い指を挿入する。挿れて奥まで届かせ、ぐるりと捩った。京哉が身を反らせて高く鳴く。 「あっ、ああん……はぁん、いい」 「京哉、そんなに動くな。傷つけたくない」 「だって、っん、勝手に動いて……や、あん、そこ!」  九天という媚薬が効いていた今朝方までと変わらないくらい、京哉は感度が良すぎて危なっかしいほどだった。長い指を閉じ込めて腰を悶えさせ締めつけては前後させる。  そんな京哉を前にしては霧島も堪らない。夢中でほぐし、馴らして己を受け入れる準備をさせた。霧島自身もいつ己が指を増やしたのか覚えがないくらいだった。  それでも傷つけたくない想いがあった。特に危なっかしい今は存分に馴らしほぐさなければと、己の欲望を抑えに抑えて京哉の躰に数指を出し入れする。指に伝わる粘性の感触が思い切り霧島を煽った。更には京哉が悶えては急かし訴えてくる。 「もう、忍さん、入れて……僕を犯してよ!」 「まだだ、もう少し待て」 「やだ、待てない……欲しいよ、忍さん、挿れてってば!」 「くっ……どうなっても知らんからな!」  咥え込ませた数指をバラバラに動かし、一際高く甘く鳴かせてから指を抜く。華奢な躰をもっと押し開いて割って入り、己のものをあてがった。滴る蜜を塗り込む。  こんな京哉とひとつになったら理性を保つのは難しいと霧島は分かっていた。 「京哉、では挿れるぞ。覚悟しておけよ」 「ん、きて……ああっ、あっあっ……あぅんっ!」 「うっく、それは京哉……反則だぞ……あっふ!」  細く白い躰を己の太いものが貫いてゆく様を霧島が愉しめたのは数秒だけ、京哉は自ら腰を動かして太すぎる霧島を全て呑み込んでしまったのだ。  それだけではない、淫らな悪戯まで仕掛けていた。お蔭で霧島は急激に達してしまいそうになる。何度も深呼吸して己を宥めては昂ぶりをやり過ごした。 「だって、欲しくて……忍さん、突いて。僕を目茶苦茶にして!」 「っく、京哉、そんなに煽って……どうなっても知らんからな!」  それでも京哉を揺らす律動はまだ細い躰を思いやったものだった。だがひとつになってなお悶える躰は淫らすぎ、更には涙まで零されて霧島の理性がとぶ。のしかかって思い切り激しく京哉の粘膜を擦過し始めていた。あまりの快感に京哉もすぐに限界を訴える。 「ああん、もう、だめ……かも、いくいく!」 「私も、一緒に、いくからな!」  京哉が目に見えて躰の中心を張り詰めさせた。霧島も急激にきつく狭くなった京哉の中で膨れ上がらせる。内襞に絡みつかれ眩暈のような快感を得た。もう我慢も限界だった。 「京哉、京哉……いく、出すぞ……あ、くうっ!」 「忍さん、いく、いっちゃう……ああんっ!」  驚くほど京哉は迸らせて自分の胸まで濡らしていた。同時に霧島も京哉の奥をずぶ濡れにしている。だが理性をとばした霧島がこれくらいで納得する訳もない。抜いたそれを京哉に見せつける。京哉は太すぎるそれを目にして息を呑んだ。  圧倒的な存在感で反り返らせたそれを目に映し、どうしようもなく湧いた京哉の情欲を察知した霧島が灰色の目で見つめ低い声で訊く。 「これでどうして欲しいのか、言ってみろ」 「んっ……攻め抜いて……後ろからも、いっぱい」 「ああ、分かった。音を上げるまで攻め抜いてやる」  這わせた京哉の背後から攻める。細い腰を掴んで引き寄せて掻き回した。幾らも経たないうちに京哉は甘く高い声で鳴きながらシーツに熱を滴らせる。  窄まりが締まって霧島も耐え難い快感に思い切り溢れさせた。それでも抜かぬまま更に攻め立て、天性のテクニックで二人分の快感を生み出してゆく。  二度、三度と深い処を突くと、京哉は閉じ込めきれずに霧島の欲望の残滓を溢れさせた。己の放出した熱が溢れ、白い内腿に流れ出している光景は淫らでそそる。 「今度はお前の顔を見ながらするぞ」  宣言すると京哉の軽い躰を返させた。そこからはもう霧島にも殆ど記憶がないほど完全に溺れ切ってしまっていた。甘く高い京哉の喘ぎと淫ら極まりない粘性の水音、それに二人の熱い吐息が室内に満ち、手繰り寄せ合う二人の情欲も果てしなかった。 「あ、ああっ……そんな、忍さん、はぁんっ!」 「煽ったのは、お前だからな!」 「や、あん、深い……忍さん、やだ!」 「本当に嫌か? 嫌なら止める」 「んんぅ、やだ……っん、はぁん、や、ああんっ!」 「私に嘘を吐いても無駄だ、声が甘いぞ。京哉、ほら……もっと、くっ!」 「ああんっ、やあんっ! それは、そこは、あっあっ!」  もうまともな言葉も口にできない京哉だったが、更なる激しい攻めを加えても、その声には何処までも甘さが混じっている。  そんなことくらいお見通しの霧島は、貫きこね回して京哉を限界近くまで追い詰めた。京哉はもう霧島に縋りついて耐えるしかない。それでも攻めから逃れなかった。 「京哉、愛しているから、もっと……もっと私にくれ!」 「ああん、忍さん……僕も、愛してます! いや、あ――」  予兆もなく京哉が霧島の腹にぱたぱたと熱をぶつける。さすがに少量のそれを見ながら、霧島自身は京哉の中にたっぷり注ぎ込んだ。  自分でも京哉の体内をいつにも増して酷く汚したのが分かる。こんなに色っぽくも感じやすい京哉を前にしては霧島も堪らなかった。押し倒して掻き混ぜ、執拗に擦過し続ける。  そのあとも普段は京哉からストップをかけるか失神するかで物理的に行為を中断することになるのだが、一向に訴えがなかったため、霧島は軽い京哉の躰を存分に好きにした。  そして京哉も九天が効いていた時と変わらぬくらい、霧島に応え自らも積極的に受け入れた。ただ、何処か妙だという訝しい思いは霧島に付きまとっている。  だが、さんざん好きにされ霧島も満足しかけた頃、ふいに京哉は全身の力を失って乱れたシーツに沈んだ。 「おい、京哉……京哉!」  危うく霧島が抱き留めた京哉は完全に気を失っているようで返事もない。行為に夢中になりすぎ、少々思考力を欠きながらも霧島は深く溜息をついて京哉をシーツに寝かせた。  バイタルサインを看ると何もかもが少し速いが正常範囲内で、今まで何度もやらかしてきたことながら、またも失神させてしまった自分に再び溜息が洩れる。  確かに京哉はいつもと違い、積極的かつ非常に行為自体にも耐性をみせた。だからといって京哉の躰自体が変化した訳ではない。それにあれだけの行為を強いては失神するというより過労で倒れてもおかしくはなかった。大体、弾傷を受けて出血もしたのだから……などと今更冷静に考える己が情けなかった。  可哀想に京哉はその身を思い切り汚してしまっている。  まず京哉に毛布を被せて自分はバスローブを着ると、キッチンからミネラルウォーターのボトルを持ち出し、洗面所でバスタオル二枚を湯で絞って戻った。丁寧に京哉の躰を拭いてやり、寝かせたままで器用にシーツも交換する。  そこまでしても目覚めない京哉が心配になって、自分を雑に拭き京哉に添い寝してやっていると三十分ほどで京哉は目を覚ました。  ぼうっとした目で周囲を見回し霧島を見てやっと焦点が合ったように黒い瞳に感情がこもる。嬉しそうで霧島も嬉しい。 「ん、あ……忍さん」  出した声は喘ぎ疲れて嗄れていた。待機させてあったミネラルウォーターを霧島は自分で口に含み、京哉に口移しで何度も飲ませてやる。五百ミリリットルのボトル半分で京哉は満足したらしい。そして見返してくる黒い瞳は疲れ切ったか眠たげに茫洋としている。 「大丈夫か、京哉?」 「ええ、何ともありません。でも何だか、疲れた、かも……あ、ふ」  欠伸をする京哉にパジャマを着せるのは諦め、再び毛布を被せると霧島は自分もバスローブを脱いで横になった。リモコンで天井のLEDライトを常夜灯にし京哉に左腕の腕枕を差し出す。右手でさらりとした髪を梳きながら足を絡め、霧島も目を瞑る。 「おやすみな。京哉」  返事は規則正しい寝息だった。
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