第48話(エピローグ)

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第48話(エピローグ)

 三日後から出勤し始めた京哉だったが、喉風邪という苦しい言い訳で機捜の詰め所でもマフラーを巻いたまま過ごすハメになった。周囲はニヤニヤ笑いだったが本人は必死である。  原因たる霧島は部下たちが何を言おうが相変わらずの涼しい顔だ。  そうしてようやく定時の十七時半となって帰り際、本部庁舎の裏口から出ようとして、入れ違いに入ってきた女性とぶつかり損ねる。 「あら、鳴海さんに霧島さんじゃない」 「えっ、あっ、綾香さん? こんな所で何してるんですか? 勾留中の旦那さんに差し入れとか?」  訊いているうちに綾香は、さも可笑しそうに笑い出していた。 「ふふ、可笑しい。違うわ、あたし、組対の薬銃課長に挨拶に行くの」 「まさか槙原省吾を引っ張られたからって、カチコミするんじゃないですよね?」 「だからその寒いギャグ止めて。全くご挨拶だわね。あのガサ入れで上手くあたしのことを隠蔽してくれたから、そのお礼よ」 「隠蔽って……まさかガサ入れで内部から手引きをしたのは貴女なんですか?」 「ええ。これでも厚生局員、潜入専門の麻薬取締官ですもの。だから貴方に何度もヒントをあげようとしたのに、なかなか気付いてくれないんだもの、参ったわ」  まさか柏仁会会長の愛人になってまで探る、ド根性な麻取がいるとは思っても見なかった京哉は霧島と顔を見合わせてから深山綾香を見返した。綾香はあでやかな笑みを浮かべてラフな挙手敬礼をしてから、「じゃあ」と階段を上って行った。 「うわあ……女性って怖いかも」  そう言いながら京哉はタイトな黒いスカートスーツ姿を目で追い続ける。ヒールを履いた引き締まった足首を見えなくなるまで眺めていると、ふいに霧島に耳を引っ張られた。 「痛い痛い! 何するんですか!」 「お前こそ何をじっと見ている、その目つきは既に犯罪だ。迷惑防止条例違反、懲役一年執行猶予(ベントウ)二年だぞ!」 「僕はそんな目で見てた訳じゃありません!」 「ならば証拠を見せろ! あれからずっとお預けだ。なあ、今晩、いいだろう?」 「そのコートのポケットの九天を僕に使わず、ちゃんと科捜研に提出してから言って下さい」                     了
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