星型ロボットと、未来のおくすり

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「よし、ちょっと風呂入ってリフレッシュしてくるわ」 「おつかれさま。ゆっくりしてきてね」  吉郎が部屋を出て行くと、エブリンは起き上がり、パソコンをのぞき込んだ。  キーボードの横には、食べかけのキウイがある。大好物らしく、こっそりと持って来たと言っていた。   「まぁ、吉郎くんらしいかな……ていうか、酸っぱい! こんなものが好きなの?」  エブリンは渋い顔で読み進めた。  書かれていたのは、二人の出会いのシーンだった。  宇宙から夜空へと迷い込んできた星型ロボットが、ベランダに落ちて来たと書いてある。  たしかに偶然を装うため、また恐怖心を取り除くため、冗談混じりにそう言った。  しかし実際には自らの意思で来た。    薬剤師という職業に憧れるその志は素晴らしいが、今の学力では到底大学に受かりそうもない。  そして何より厳しい現実として、両親にそれだけの学費に対しての経済力がない。  それを受け入れて、見上げていた夜空。  そこに現れた流れ星にかけた願い事は『薬局のおばちゃん』みたいになりたいだった。  そんな心の声を聞いたエブリンは、迷うことなくその願いの元へと向かったのだった。  すてきな小説が生まれる予感がした。  未来で今必要とされているのは、吉郎のような人間が書く物語だ。  一度は夢を見て、諦めた。  そんな人にしか書けない物語もある。   「お、二ページ目もあるじゃない」  ページをめくると、そこには吉郎が薬剤師を目指していたきっかけが書いてあった。
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