14人が本棚に入れています
本棚に追加
「よし、ちょっと風呂入ってリフレッシュしてくるわ」
「おつかれさま。ゆっくりしてきてね」
吉郎が部屋を出て行くと、エブリンは起き上がり、パソコンをのぞき込んだ。
キーボードの横には、食べかけのキウイがある。大好物らしく、こっそりと持って来たと言っていた。
「まぁ、吉郎くんらしいかな……ていうか、酸っぱい! こんなものが好きなの?」
エブリンは渋い顔で読み進めた。
書かれていたのは、二人の出会いのシーンだった。
宇宙から夜空へと迷い込んできた星型ロボットが、ベランダに落ちて来たと書いてある。
たしかに偶然を装うため、また恐怖心を取り除くため、冗談混じりにそう言った。
しかし実際には自らの意思で来た。
薬剤師という職業に憧れるその志は素晴らしいが、今の学力では到底大学に受かりそうもない。
そして何より厳しい現実として、両親にそれだけの学費に対しての経済力がない。
それを受け入れて、見上げていた夜空。
そこに現れた流れ星にかけた願い事は『薬局のおばちゃん』みたいになりたいだった。
そんな心の声を聞いたエブリンは、迷うことなくその願いの元へと向かったのだった。
すてきな小説が生まれる予感がした。
未来で今必要とされているのは、吉郎のような人間が書く物語だ。
一度は夢を見て、諦めた。
そんな人にしか書けない物語もある。
「お、二ページ目もあるじゃない」
ページをめくると、そこには吉郎が薬剤師を目指していたきっかけが書いてあった。
最初のコメントを投稿しよう!