運命の赤い糸

11/22
前へ
/22ページ
次へ
矢口を見遣る。 机に突っ伏して寝ている。 私の赤い糸の先は依然、矢口に向かって伸びている。 どうせ、夜遅くまで恋愛シミュレーションゲームでもやっていたから眠いんだろう。 その後の授業中、どうしても矢口が気になってチラチラと様子を窺ってしまった。 なんてことない、見た目も地味なタダの陰キャなのに。 昼休み、とうとう私は我慢が出来なくなり、お弁当を食べ終えた矢口の前の席に座って話しかけてしまった。 「ねえ、矢口。あんたさ、なんか趣味とかあんの?」 「え、え、な、なに?や、八巻さんが何で?」 分かりやすくキョドってるよ。 まあ、いきなりカースト上位の美人から話しかけられたら、女性耐性のない陰キャの反応としてはこんなもんか。 今、他のメンバーたちは連れ立ってトイレでメイク直しをしている。 私のような女子が陰キャと話しているのをグループの女子には見られたくない。 早く答えて欲しい私は少し苛立って問いかける。 「理由なんて何でもいいから!何か好きな事とかハマってる事とかないの?」 「そ、そうですね。し、強いてあげるとすれば、しゃ、写真です、かね?」 「は?あんた、写真なんか撮ってんの?」 「は、はい。す、すみません。インスタにあげているので、よ、良ければ、見てみてください」 言うと、震える手でスマホを素早く操り、自分のアカウントを表示させて見せてくれた。 「そうなんだ。ま、暇だったら見てみるわ」
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加