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矢口を見遣る。
机に突っ伏して寝ている。
私の赤い糸の先は依然、矢口に向かって伸びている。
どうせ、夜遅くまで恋愛シミュレーションゲームでもやっていたから眠いんだろう。
その後の授業中、どうしても矢口が気になってチラチラと様子を窺ってしまった。
なんてことない、見た目も地味なタダの陰キャなのに。
昼休み、とうとう私は我慢が出来なくなり、お弁当を食べ終えた矢口の前の席に座って話しかけてしまった。
「ねえ、矢口。あんたさ、なんか趣味とかあんの?」
「え、え、な、なに?や、八巻さんが何で?」
分かりやすくキョドってるよ。
まあ、いきなりカースト上位の美人から話しかけられたら、女性耐性のない陰キャの反応としてはこんなもんか。
今、他のメンバーたちは連れ立ってトイレでメイク直しをしている。
私のような女子が陰キャと話しているのをグループの女子には見られたくない。
早く答えて欲しい私は少し苛立って問いかける。
「理由なんて何でもいいから!何か好きな事とかハマってる事とかないの?」
「そ、そうですね。し、強いてあげるとすれば、しゃ、写真です、かね?」
「は?あんた、写真なんか撮ってんの?」
「は、はい。す、すみません。インスタにあげているので、よ、良ければ、見てみてください」
言うと、震える手でスマホを素早く操り、自分のアカウントを表示させて見せてくれた。
「そうなんだ。ま、暇だったら見てみるわ」
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