運命の赤い糸

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放課後。 女子グループメンバーの好奇の目にさらされながら、岡田と並んで校門を出ていく。 岡田は、クラスの話題や先生の噂話、バイト先の先輩の話から家族の愚痴まで、次から次へと話が続いていく。 普通の女子だったら楽しいんだろうなと思いながら、うわの空で相槌だけ打っていた。 目的のカフェに到着すると、岡田は自分の手柄をアピールするかのようにメニュー表を見せてきて「これこれ」と目を輝かせる。 岡田の期待に添うように注文をした。 しばらくしてから店員がテーブルに置いたカップには、今まで見たことのない立体的なラテアートが施されていた。 「ふっわぁ~、すっご~い」 演技ではなく思わず声が漏れた。 猫がコーヒーカップをお風呂代わりにしているような姿が、泡とチョコレートソースで作られていた。 すぐに写真を撮ってインスタにあげた。 可愛すぎてもったいなくて、なかなか手を付けられなかったけど、目の前で見ている岡田のためにも意を決して猫ちゃんにスプーンを入れる。 あっという間に可愛いラテアートを堪能し、そろそろ店を出ようかという時間になったので、私はお手洗いに行くことに。 メイクを直して、この後誘われたらどうやって断ろうかなと考えながらトイレから出ると、岡田はテーブルにいなかった。 トイレかなと店内を見まわしてみると、他のテーブルの可愛い女の子と楽しそうに話していた。 チャラい性格は本当、ブレないな、と呆れながらも岡田の指先を見てみると、赤い糸がその女子と繋がっていた。 まさか、こんなところで運命の人に出会ったの? 事情を察した私は、 「ごめん、急用出来ちゃったから先に帰るね」 バツの悪い表情を浮かべた岡田を残し、そのまま店を出て家まで帰った。 もちろん、お金は払わなかった。
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