運命の赤い糸

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それからは慎重になった。 樹里が休みの時や別行動になった時を利用して矢口と話した。 ある日、いつも以上にオドオドしていた矢口が俯きながら申し訳なさそうに、 「明日、近所のおばあさんの家に子猫の写真を取りに行くんだ」 一緒に行く?なんて言ってきた。 前に私が子猫の写真に猛烈に反応していたのを覚えていたんだろう。 その時の子猫の飼い主の家にまた子猫が生まれたらしく、写真を撮らせてもらう許可をもらったそうだ。 女子に免疫のないこいつが誘いをかけてくるなんて、相当な決意と覚悟がいっただろう。 私を喜ばせたいという一心で勇気を振り絞ったんだろうな。 下手したら笑われて馬鹿にされて、侮辱に晒される可能性だってあったはずだ。 私の答えは決まっていた。 待ち合わせ場所を決めることになったが、校門では目立ちすぎて嫌だから駅前のロータリーにした。 そこなら誰かに見られても、偶然居合わせたという言い訳も成り立つという、私の(いや)しい保身も含まれていた。
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