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1.清少納言
「ムキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」
発情した猿でさえ出さないような、奇声とも悲鳴ともつかぬ叫び声が、宮中に響き渡った。
「何事です? 諾子(なぎこ) 」
まだ耳鳴りの止まぬまま、そう問うたのは、藤原定子。時の一条天皇のお后様で、諾子というのは、かの有名な清少納言の本名である。
「ちょっと聴いてくださいな、定子様~」
天皇の后と、あくまで宮仕えである清少納言であったが、大変仲が良く、互いに名前で呼び合うほどの関係であった。
「これをお読みになって」
そう言って、 諾子は一枚の紙を定子に差し出した。そこには、一首の和歌と定子の名が記されていた。それだけであれば、何の問題もなかったのだが、何やら脇に文字が並んでいる。
「をかし」だの、「あはれ」だの、中には、どうやら和歌の批評のようなものも混じっている。
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