3.あぢきなし

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3.あぢきなし

 諾子は一通り説明を終えると、未だ興奮冷めやらずといった感じで、定子に詰め寄った。  「定子様、ここです、ここ!」 指さされた箇所には、次のように記されていた。 ”したり顔にいみじうはべりけるも もののあはれもなく げにあぢきなし”  「知識をひけらかしているだけで、趣もなく、本当につまらないわ」くらいの意味である。  定子のサロン内はもちろん、宮中では誰もが一目置く才女である諾子(清少納言)に対し、悪意すら感じるコメント。  諾子も読み流せば良いものを、正直ドヤ顔で詠った自覚のある和歌であったから、それを見透かされた気がしたこともあり、激昂したのであった。  (ここまでこの私を愚弄するとは…絶対赦さないんだから!)  桔梗の咲きほこる庭先で、諾子は闘志を掻き立てるように、再び咆哮を上げるのだった。
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