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5.炎上合戦
毎日のように、男女を問わず、誰かしらの和歌や漢詩、最近では随筆やら評論めいたものまでが、宮中を飛び回った。
その中でも、「あはれ」や「おかし」の好評価が圧倒的に集中していたのが、諾子(清少納言)と香子(紫式部)の手によるものであった。
だが、そこには、必ずお互いに批判し合うコメントが加えられており、その内容も日増しにエスカレートしていく始末だった。
「この鼻持ちならない言いぐさ。何様のつもりだろう」と香子が書けば、「それおまゆうだし。てか、単なる嫉妬じゃん」と諾子。
「誰かに同情されたいわけ? ワンチャンもないわ」と諾子が書けば、「こんな女を妻に迎える殿方なんているわけがない。所詮無理ゲーっしょ」と香子。
またある時には、「パリピー並みの軽薄さ。恥ってもんがないのかしら」と香子。諾子は諾子で「陰キャもここまでくると同情もんだわ」と返す。
それを受けた香子は、「マジうざいんですけど。頼むから消えてほしいわ」と書き足し、「いや、それオマエの方だし!」と諾子が更に煽る。
このようなやりとりが、三日にあげず繰り返され、ボクシングで言うところのノーガードの乱打戦の様子を呈していた。
宮中では、いつの間にかこの二人のやりとりを、傍観者気取りで楽しむ者さえ出てくる始末で、気が付けば、『炎上ひとりごつ』という、一大ムーブンメントにまでなっていたのである。
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